ハーメルン
TITANUS‐THE TITAN MONSTRAS‐
姉妹と教師

「私に『お兄さんをあなたにあげます』と言ってくれないかね!」
「………はいぃッ!?」
 それはあまりにも唐突な進言にアキは戸惑いと困惑と言う最も対応に困る感情が混ざった気持ちに陥らせた。
「…はっ!…そうじゃなかった、ごめんなさい…ついカイジューソウルの影響で変なことを口走っちゃった!」
 突然のことに困惑しているのは言い出した本人も同じ様子だった。
「あらら~、お姉ちゃん…今日はやけに積極的じゃな~い」
「おうおう、うちの弟分に手を付けようとはエエ度胸ですなぁ~エミリはん」
 突拍子もないことを口走ったレディースのスーツ姿の女性を左右からミオと共に大胆にも露出度の高い服装の女性が絡んでいた。
「うっ、うるさい!勧誘には慣れていないのよ!…大変申し訳ない…別にやましい意味はないのよ!」
「うっ、うん…大丈夫です、そこは理解していますから」
 必死に弁明しようとするスーツの女性と彼女の意図を理解するアキだったが…先ほどからトンデモ発言後からのミオと肩を組んで姉妹らしき人物がニヤニヤしながら煽り散らしていた。
「改めまして…NISHINAの代表を務めます、仁科エミリと申します…メフィラス星人の怪獣娘です」
「私は仁科カレン、お姉ちゃんと同じくメフィラス星人…なんだけど正確には二代目、異星人タイプには珍しい同じ名前だけど別個体扱いの怪獣娘よ」
 今日、アキとミオが訪れていたのは原宿のメインストーリーに店を構える『プティ・マガザン原宿店』…の店舗が見える雑居ビルの中にあるNISHINAの事務所だ。
 今年から都内に店を構え始めた北海道の人気ブランド『NISHINA』が都心に進出したことでニュースでも取りざたされるだけあって店舗側は長蛇の列を為すほどの大盛況ぶりだった。
「ええっと…それで、なんでボクのお兄ちゃんが必要なんですか?」
「それはですね…NISHINAは今度の新規事業に男性用スーツを製作いたしまして、広告塔のモデルとしてお兄さんをお借りしたいだけなのです」
 エミリはアキとミオに製作した男性用スーツの見本図と素材標本を見せ、改めてユウゴをNISHINAブランドのスーツモデルに起用できないか検討してほしいと提案してきた。
「へぇ~…スーツかぁ……お兄ちゃんって、見た目に拘らない人だからなぁ」
「確かに…あのゴツイ体格にスーツ姿が足されたら、いよいよお父さんに似ちゃうわね」
 ミオの認識の中でユウゴにスーツを着せた姿と記憶の中に存在するユウゴとアキの父親の印象が重なった。
「そういえばミオさんってボクのお父さんのことご存じだったんですよね…ボクはあんまり覚えていないけど、よくスーツを着ていた人なんですか?」
「うん、そうだよ スーツの上にロングコートと眼鏡をかけていたかなぁ…知的な感じの人って印象だったからお義父さんと同じ大学関係の人だと思うわ」
「あれ…ミオっちのお父さんって…」
「んんっ!…カレンッ」
 エミリはカレンの不用意な発言が出そうになったのを咳払いで誤魔化した。
 しかし、アキは一切気づかずにNISHINAブランドの男性用スーツの見本図をミオと一緒に眺めていた。
「う~んッ…普段から黒一色の人だから黒かなぁ?」
「なんか喪服みたいじゃない?…黒だけでも何色もあるからあの子に会う色って何かしらねぇ」
 ミオは手に顎を乗せ、アキは頭に人差し指を立てながらユウゴの全体像に会う黒色を連想して見るもパッと思い浮かぶ黒色が出てこなかった。素人連想故か黒を黒以外に浮かぶようなカラー名などありもせずかなり難航していた。

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