ハーメルン
仮面ライダーアズール
EP.12[曇天]

 ホメオスタシスのメンバーと電特課の安藤 宗仁が集まり、報告を行った翌日。
 集合地であった病院の中で、天坂 響は身支度を整えていた。生憎の曇り空だが、響の気分は晴れ晴れとしている。
 本日、ようやく彼は退院する運びとなったのだ。これでまたホメオスタシスとしての活動を再開できる。
 それはつまり、翔と一緒に生活しつつ、肩を並べて戦うという事でもある。

「……そんな日が来るとは、思いも寄らなかったな」

 唇を釣り上げながら、響が呟く。
 昨日彼らが去った後に、病室には何人もの若いナースが、別れを惜しんで響へ挨拶にやって来た。同じ患者も、ファンの子供が来たのでサインを書いた事もある。
 入院している間も、何度もクラスメートやゲーマーの友人・ライバルたちが響の元に来て、快復を願う言葉や激励の他にも宣戦布告を叩きつけて来たりもした。
 長いようで短かったその入院生活も、これで終わりだ。

「さぁ、行くか」

 アタッシュケース、そして着替えなど鞄に荷物を詰め込み、響は病室から出る準備を整える。
 だが、いざ出ようとしたその時だった。
 突然病室の扉から、ノックの音が聞こえたのだ。

「なんだ……翔のヤツ、もう迎えに来たのか?」

 迎えに行く時は連絡する、と昨日の晩に翔からメールがあったのだが、まだその旨の着信は届いていない。
 不思議に思いながらも、響はその扉の先にいる来客に「どうぞ」と声をかけ、入室を許可した。

※ ※ ※ ※ ※

「……おかしいなぁ」

 同じ頃、兄を迎えに行く準備を終えた翔は、自宅から自分のN-フォンで響に電話をかけていた。
 しかし先程から既に五回ほど掛け直しているのだが、一向に通話に応じる気配がない。
 ソファーに座っているアシュリィも、小首を傾げている。響は一体何をしているのだろうか。
 そうして六回目のトライを始める直前、翔のマテリアフォンに別の人物から着信が入る。
 陽子からだ。まさかデジブレインが現れたのだろうか、と思いながら翔は応答した。

「もしもし」
『翔くん、大変よ……!』
「何があったんですか!? まさか、デジブレインが!?」
『違うの! 今病院から連絡があって分かったんだけど、響くんが……』

 ドクン、と心臓が警鐘を鳴らす。しかしその気持ちを押し隠しながら、翔は話の続きを促した。

「兄さんがどうしたんですか?」
『響くんがいなくなったの! まだ手続きも何も済ませてないのに、荷物も全部なくなってるみたいなのよ!』

 兄が失踪した。
 その事実を耳にした翔の顔が青褪め、心臓の鼓動が激しくなり、息苦しさが増していく。
 一体何故? どうしてそんな事が起きなければならない?
 困惑と恐怖で脳内を掻き乱される中、さらにマテリアフォンから別の用件が告げられる。

『デジブレインが出た!? しかも二箇所って……ごめん翔くん、こんな時で悪いんだけど今すぐ現場に向かって!』
「分かり、ました……」

 心臓と頭を絞め付けられるような感覚のまま、翔は辛うじて返事をする。
 陽子から指定された場所は、帝久乃市立図書館、その屋上庭園だ。自宅からも、そして病院からも然程遠くはない。
 通話を切った後、翔はアシュリィの方を振り返った。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/14

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析