ハーメルン
仮面ライダーアズール
EP.26[暴悪なるジェラス]

 ラチェスアーティストとの戦いが終わり、後は帰還するのみであったはずのホメオスタシス一行。
 その彼らの前に姿を現したのは、あのヴァンガードであった。
 手には返り血に染まったナイフが握られており、足元で彩葉の祖父の面堂 元作が永遠の眠りについている。即死だったようだ。

「どうして……どうして殺したんだ……!!」

 拳と声を震わせ、翔はヴァンガードを睨みつける。その両隣で、アシュリィも響も怒りの形相となっていた。

「この人にはもう戦う力も意思もなかったはずだ!! なんで、どうしてこんな事ができる!?」

 翔の非難を聞いても、ヴァンガードは眉一つ動かさない。むしろ面白そうに笑っている。
 続いて、翠月が彩葉をかばうように前に出た。

「ホメオスタシスを裏切った男だと聞いた時、それに初めて出会った時から、お前からはおぞましい悪意の臭いを感じていた。だが、栄 進駒や伊刈 律や面堂 彩葉を見ている内に、きっと何か……他のCytuberのように同情の余地がある事情を抱えているのかも知れないとも思った。退くに退けない何かがあると。そしてきっと……自分の罪に気付き、償うのだろうと」

 マテリアプレートを握る手に強く力を込めながら、翠月は叫ぶ。

「ついに超えてはならない一線を超えたな……下衆が!! お前だけは、どんな事情があろうとも絶対に許さんぞ!!」

 呆然とする彩葉を除く全員が、一斉にヴァンガードへと敵意を剥き出しにする。
 そんな彼らの怒りを嘲笑うかの如く、ヴァンガードは物言わぬ元作の顔面を蹴りつけた。

「さっきからうざってェなぁ~~~、こんな老い先短いクソジジイをブチ殺して一体何が悪いってんだ? ちょいと速めにポックリ逝っただけでガタガタ騒ぐなよ」
「なんて事を……!!」
「それに、このジジイとそこの元デカダンスは俺の領域の座標を知っている。どっちみち……遅かれ速かれいつか殺すつもりだったのさ」

 くつくつと喉奥で笑いながら、両腕を広げてさらにヴァンガードはホメオスタシスの面々を煽り続ける。

「つまり、こいつを殺す時期が速まったのはホメオスタシスのせいって事だよなぁ~~~? お前らがデカダンスを倒しに来なかったらこんな事にはならなかったんだからよぉ!」

 その勝手極まりない無神経な一言が、怒りの火が点いている翠月の心に、油を注いだ。

「構えろ……徹底的に叩きのめす!」

 翠月はそう言ってタブレットドライバーを装着し、ヴァンガードと対峙する。
 その後ろで翔もアプリドライバーを装備して、背を向けたままアシュリィと響に語りかけた。

「アシュリィちゃん、兄さん。二人は浅黄さんと一緒に面堂さんを連れて、あの街まで逃げるんだ。その後は被害者を連れて現実世界まで戻って欲しい」
「ショウはどうするの!?」
「……ヴァンガードを足止めする。怒ってるのは英さんだけじゃない、僕もこの人を倒さなくちゃいけない……!」

 大切な人を失う痛みと哀しみ。それを知っているからこそ、翔も翠月もヴァンガードを許す事ができなかった。
 その気持ちを理解して、アシュリィは言われた通り、響や浅黄を伴って街へと避難するのであった。

「人払いは済んだかよ? まぁお前らなら丁度良い実験台(モルモット)になりそうだなァ、特に散々俺を痛めつけてくれたお前の方は」

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