EP.27[不死身]
「……で、これがウチにやって欲しい事なワケ?」
ホメオスタシスの地下研究所にて。
鋼作・琴奈・鷲我の三人が取り掛かっている作業を見て、浅黄は言った。
彼らの前にあるのは、ひとつのマテリアプレート。しかし、それは従来のものよりも分厚く、二枚を重ねているようにさえ見える。
「そうだ」
「でもさ、これってほんとに大丈夫なの? 誰が使うのか分かんないけど、この出力は……」
「使うのは翔くんだ。いや、彼にしか使えないと言うべきか」
鷲我の言葉を聞き流しながら、浅黄はプレートの解析を継続する。
そして、眉間に深く皺を刻み込んだ。鋼作たちがその表情から読み取ったのは、深刻な危険信号。
「それマジで言ってんの? あの子、死ぬよ?」
翔が死ぬ。
もしもそれが事実だとするなら、鋼作と琴奈は何がなんでも鷲我を止めなければならなかった。
事実、二人の目から見てもこの大型のマテリアプレートの使用は危険が大きい。起動の時点で、マテリアプレート二枚分どころか、それを遥かに超えるカタルシスエナジーを必要としている。
使用者への危険で言えば、以前に暴走を引き起こしたV2の時とは比べ物にならない。オーバーシュートはおろか即死する可能性さえある。
一応は翔以外のリンクナーヴや、基準値以下のカタルシスエナジーを承認しないようセーフティが掛かっているが、起動した直後に翔が命を落とす事も充分に考えられるのだ。
「我々がジュラシックゾンビリンカーの不死性に対抗するには、どちらにしても彼に頼らざるを得ないんだ」
頑として鷲我は言い切り、重々しい口調で「それに」と続ける。
「彼は絶対に死なない。翔くんの中に眠る『特別な力』……もしもそれが私の想像通りのものなのだとすれば、むしろ彼はこのマテリアプレートを容易に扱う事ができるだろう」
「……どういう事ですか?」
言葉の意味を理解できず、琴奈が問う。
傍で聞いていた鋼作と浅黄にも、鷲我の意図は分からなかった。
そして鷲我自身も、多くを語らず頭を振る。
「すまない、まだ詳しい事は言えない。何より当の私自身が、あまりにも非現実的な推測だと思っているくらいだからな」
眉間を指で抑え、すぐに顔を上げる鷲我。
「だが……もし、彼が本当にこれを使いこなして、結論が出たなら。その時が来れば、話す。約束しよう」
そう言って、鷲我は再び集中して作業に取り掛かる。
こうまで断言されては浅黄にもどうしようもない。追及を諦めて、鋼作や琴奈と共に鷲我を補佐するのであった。
翔の、アズールのためのマテリアプレート。彼が仮面ライダージェラスを打ち破るための鍵。
新たなる力の製造を。
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