EP.03[謎の少女]
「逃げられた……!?」
すっかり姿を消してしまった軍鶏を探すも、時既に遅し。仕方なく翔は変身を解除し、アシュリィの方に向き直る。
「大丈夫?」
「……」
「君が無事で良かったよ」
そう言いながら、翔は右手を差し出す。
躊躇い、戸惑うアシュリィ。この手を取ってもいいものか、悩んでいるようだった。
翔も自分から手を握る事はしなかった。その代わりに、優しく微笑みかける。
「行くところがないならウチにおいでよ。一緒に帰ろう?」
「帰る……?」
「うん」
優しく暖かい声、それでもアシュリィには彼を信じ切る事ができない。
だが、少なくとも。自分を護りたいという言葉に、偽りはないように感じ取れた。
「……」
アシュリィは恐る恐る、彼の手を握る。翔も微笑みながら、その手を握り返すのだった。
「使えないなぁ、全く」
そんな二人が立ち去る様子を、影で覗き見る者がいた。
その男は翔たちが戦っていた場所のすぐ近くにある屋外駐車場で、ずっと戦いを見ていたのだ。
しかし、二人がまるで気づかなかったのが不自然な程に、その男は長身――というよりも巨身だった。
服装もエキセントリックなもので、頭にはチェック柄の軍帽を被り、身に纏っているのは左右で白と黒に分かれた軍服。さらに帽章には、チェスにおけるキングの駒が描かれている。また、左腕には緑色のスマートウォッチに似た機械を装着している。
しかし何より特徴的なのは、顔も含めた全身だ。
まるでコンピュータ・グラフィックスがそのまま飛び出してきたかのような、現実味のない姿をしている。身長は明らかに250cmを超えており、それでいて非常に細身。顔も整っているが、明らかに現実の人間のそれではなく、どこか不自然さがある。
「折角ボクの手柄になるかと思ったのに、あのデジブレイン……負けちゃうなんて」
溜め息を吐き、巨人はスマートウォッチのような機械の画面中央にあるENTERのアイコンを押し、「ゲート」と音声入力する。
すると周囲の空間が歪み、男の姿が徐々に消失していく。
「まぁいいさ。どっちにしろあんなヤツら、ボクの敵じゃないし」
その言葉の直後、男は忽然と姿を消した。
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