EP.05[ロボットジェネレーターとジェイル・プラネット]
帝久乃市のイタリアン食堂、フィアンマに現れた謎のチェック模様のデジブレインたち。
それらにホメオスタシスが苦戦する様を、ストライプは雑居ビルの屋上でゆったりふんぞり返りながらと、勝ちを確信したように笑顔で眺めていた。
「羨ましいねぇ……」
その声が聞こえた途端、ストライプの顔から笑みが消える。そして、声の聞こえた背後を忌々しげに振り返った。
すると、屋上の扉の前で突っ立っている男の姿が目に入った。
「調子良さそうじゃねえか、ストライプ」
「ヴァンガード、何の用? 手柄を横取りしに来たの?」
「なぁに、ただのヒマ潰しだよ」
姿を現したのは、奇怪な宗教の教祖のような風貌の男だった。赤茶色の髪は腰にかかる程まで伸びており、顎髭を蓄えている。首からは聖職者が身につけるような黒色のストラを、手には蛇を模した金色の司教杖を持っている。
しかし何より特徴的なのは、その服装だった。男の体を覆う純白のカソックには、様々な漢字やアルファベットが全身を覆うように羅列されているのだ。
そしてストライプと同様左腕にはスマートウォッチがあり、その顔や姿は現実離れした、CGが現実に飛び出して来たかのような印象を与える。
ヴァンガードと呼ばれた男はやや垂れ気味な目をストライプに向けつつ、頬を歪ませて笑った。
「ふぅん。まぁいいけど、手出しは無用だよ」
「そんな野暮なマネはしねぇよ。今はお前の番だからなぁ」
邪魔をしない事の意思表示なのか、ヴァンガードは両手を上げて手すりにもたれかかる。
するとストライプも、関心を失った様子で再び地上へ視線を落としつつ、盤上の駒を動かす。
「それにしても」
ストライプは、じっと目を細めて考え込む。
なぜ、先程からリボルブは付かず離れず、チマチマとその場に押し止めるような攻撃をするだけなのか?
ストライプの配下であるチェスポーン・デジブレインやチェスナイト・デジブレインはほとんどダメージを受けていない。リボルブの火力を考えれば、もっと味方に被害が出ても良いはず。
ここまで消極的な攻め方をするのは不自然だ。これではまるで――。
「時間稼ぎ?」
だが、ストライプはすぐに頭に浮かんだその考えを「バカな」と一蹴する。
戦力差は圧倒的だ。なのに、時間を稼いで何の意味がある? アズールが戻るのを期待しているのか?
「……いや、案外あり得るかも」
アズールがニュート・デジブレインを倒して戻れば、戦況を引っ繰り返せるかも知れない。それがリボルブの考えだとすれば、納得が行く。
しかもアズールとニュートは一対一、こちらとは状況が違う。アズールの強さも未知数、何かの間違いがあれば逆転もあり得ないわけではない。
ならば。
「保険をかけておくか……」
優れた軍略家は、敵のいかなる策をも読み尽くして先手を打つもの。それがストライプの持論だ。
ストライプはヴァンガードへと振り返り、彼に「ひとつ仕事をあげるよ」と声をかける。
「サイバー・ラインにいるアズールに、何体かデジブレインをけしかけて来てよ」
「なんだ、手出し無用じゃなかったのか?」
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