EP.06[鬼狩ノ忍]
ホメオスタシスが、イタリアン食堂に現れたデジブレインの侵攻を阻止して二日後。
ストライプとヴァンガードは、揃ってサイバー・ラインのとある場所に集まっていた。
宇宙空間のように広大で、黒く殺風景な場所。壁は星座のように赤黒い光の点と点が線で繋がり合って構成されており、床は同じ色の光でできている。
「そうだ、ストライプ。忘れモンだぜ」
道の途中、ヴァンガードが文字だらけのカソックからある物を取り出し、ストライプに投げ渡す。
左右で白と黒に分かれたポーンの駒。雑居ビルの屋上でストライプが処理し忘れていた、警察に回収されたはずの証拠品だった。
「……どこにもないと思ったら、あの時落としてたのか」
「気を付けろよ? 証拠品のデータも処分しておいてやったが、警察の連中もバカじゃねぇからな」
「そんなの分かってるよ」
半透明な床の上を、二人は並んで歩く。そうしてしばらく歩いている内に、目的の場所に辿り着いた。
宙に浮かぶ金属製の大きな丸いテーブルに、それを囲むようにして配置されている、浮遊する七つの椅子。椅子は球状で、丸くくり抜かれた部分に座るようにできている。
七つの椅子の内、五つは既に埋まっていた。そのため、ストライプとヴァンガードは隣同士の空席に座る事となった。
座る彼らの頭上には、ホログラムのネームプレートが浮かび上がっている。ストライプには『Seventh:Vain』、ヴァンガードは『Sixth:Jealous』という具合だ。
『皆様集まったようですね?』
そんなよく通る声が室内に響くと同時に、卓上に一人の男がホログラムとして投影される。
シワひとつないダークブルーの上品な礼服と清潔な白のワイシャツを着ている、紳士然とした男。両手には白い手袋、首には鮮やかなマラカイトグリーンのリボンタイが巻かれており、そのタイの結び目は孔雀の羽根を模したブローチで飾られている。
男の顔は、上半分が豪奢な孔雀の羽根飾りが付いた紫色の仮面で覆われているため、窺い知る事はできない。
しかしその口元には見る者の警戒心を解くような、優しく柔和な笑みを浮かべている。
「どうしたんです、スペルビアP。突然ボクらを呼び出すなんて」
テーブルに片肘を付きながらストライプが訊ねた。
するとストライプの斜向かいから、低く嗄れた男の声が、まるで窘めるように「ストライプよ」と呼びかける。
視線をそちらに移すと、そこには腰に刀を提げて白い道着と深緑色の袴を着た、鰐の頭を模った革製の首飾りを提げている白髪頭の壮年の男が――食事を摂っていた。
山のように茶碗に盛られた白米、鍋かと見紛う程に大きな器に入った味噌汁、そして数十匹の焼き魚と少量のたくあんという献立だ。
男はストライプやヴァンガードと同じく、左腕に緑色のスマートウォッチのようなものを装着している。しかも男だけではなく、会議に参加している者全員がこれを身に着けているようだ。
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