28,29
大勢の志願者の前に現れた豪華な服を着た男。
すぐ傍には背の低い初老の男が立っていた。
そしてその背の低い男が喋りだした。
「私はこの城の執事を務めるトネリオと申します。
隣におられる城主様の代わりに私から皆さんに
説明させてもらいます。
一週間前のことです。城主様に一通の手紙が届きました。
そこにはこう書かれていたのです。
『7つ太陽が沈むとき、貴公の持つ宝石レッドエメラルド
を頂きに参ります。盗賊団シャドウラビッツ』
と。そこで皆さんには城内の見回り及び盗賊団の
捕獲をお願いしたいのです。」
城主が手紙を持ち出しそれを叩いて大声で喋りだした。
「お前らぁ!こんなふざけた手紙をよこしたウサギ野郎を
絶対に引っ捕らえろぉ!殺しても構わん。
奴らに二度と太陽が見れないように酷い目にあわせてやれ。」
これを聞いたジルとマルクは
「おいおい、『殺しても構わん』ってずいぶんだな。」
「どうやらあの噂話は本当のようですね。」
城主が奥へと戻っていくとトネリオが再び説明を始めた。
「皆さんにはこの城の簡単な見取り図を配ります。
そこに皆さんに警備してもらう部分なども記してますので
よく見ておいて下さい。」
説明が終わると、トネリオは指をパチッと鳴らした。
すると兵士が何人か現れ皆に見取り図を配りだした。
「それでは私はこれで失礼します。みなさん明日の朝まで
よろしくお願いします。」
そう言ってトネリオも部屋を出て行った。
ジルは配られた見取り図を見て、
「なるほど。宝石のある部屋とその扉の前には信頼できる近衛兵を
置いて俺達には廊下や外側の部分を当てているのか。
俺達の中に盗賊が紛れ込んでいるとも限らないから用心してるんだな。」
「問題は私達2人はどこを警備するかですよね?」
「うん、この図には細かい配置は書かれていないから決められた
範囲ならどこでもいいってことだろうな。」
「外から見た感じではこの城には人が入れる程の大きさの窓は全くありませんから
入るとすればただ一つある正面の門からの入り口だけですよ。」
「じゃ、入り口を入ったすぐのとこで決まりだな。」
2人はさっそく入り口近くまで行ったが、すでに大勢が同じことを
考えてかそこに集まっていた。
「うわぁ~、雇われた奴ほとんどここに
いてるんじゃねぇの?」
ジルは周りを見回して呟いた。
「どうします?別のところに移りますか?」
マルクはジルに聞いてみた。
「いまさら別のところに行ってもねぇ...
元々やる気あんまりないしここでいいよ。」
「そうですか、まぁ盗賊もこれだけの兵を
見れば諦めて帰るかもしれませんよ。
そういえば城の見学はもういいんですか?」
「そうだった。まだ日が沈むまで時間も
ありそうだしいけるとこは行っておくか。」
そうして2人は日が沈むまで城の中をうろうろと
回り歩いていた。
一方、クラレッツ城の地下室にて。
「おい、ここは城主様以外立ち入り禁止だぞ。」
ある部屋の扉の前に立つ番兵の前に黒いローブに
身を包んだ男が現れた。
「愚かな。きさまには闇の世界を見せてやろう。」
そういうと男は手を番兵の顔に当て、
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