十八頁
《『いいですか?暴力を振るって良いのは人外共と異教徒共だけです』》
そんなセリフと共にそれは現れた。
聖剣使いと紫藤イリナの二人しかいないはずの部屋、聖剣使いのように『透明の聖剣』を使っているわけでないのに誰もいないはずの空間からそれがゆったりとその姿を現した。
黒い外套に髑髏の死面。背負うは棺桶、その手に握られているのは一振りの刺剣。
すなわち笑う棺桶、死銃、Sterben。
嗤う嗤う嗤う。
「あなたが死銃……」
《そういう、お前は…紫藤イリナか》
髑髏の眼光を赤く滾らせながら、その手の刺剣を紫藤イリナへと向ける。
それに対して紫藤イリナもまたその手に握る聖剣を構えなおす。既に彼女の頭の中から先程の元プロテスタントであろう聖剣使いの事は失せていた。何せそんな事を考えていれば────目の前の男に負けるだろうから。
そんな彼女の心中を理解し、マスクの下で嗤って
「────ッッ!?」
唐突に紫藤イリナの後方からいくつもの銃弾が襲撃する。
ギリギリの所で回避してみせるがそんな注意を逸らす行動は命取りとなるのは間違いない。
《そこだ》
「くっ……!」
回避先へと放たれた刺突を『擬態の聖剣』らしく刀身の形状を広くする事で受け止め、そのまま刀身を滑らせるように鍔迫り合いへと持ち込んでいく。
なるほどただの剣士で一対一ならばそれで良いのだろう、だがしかしだ。
《付き合うつもりは、無い》
再び銃撃が紫藤イリナを襲う。死銃共々だ。
「嘘っ!?……カハッ」
そのままでは食らうと判断したのだろう。鍔迫り合いを解いてそのまま転がる様に横へ回避しようとして、そこに死銃の蹴りが叩き込まれその勢いままに壁へと転がっていく。
それによりその場に留まった死銃へと銃弾が殺到するが刹那、死銃の目の前に現れた防弾シールドによって阻まれる。
《何時から、一対一だと思っていた。ここは、敵地でオレは傭兵だ》
「っぅぅ……」
その手で刺剣をペンを回すように回しながら、その視線は扉の外、廊下の方へと向けられている。
暗めな廊下より現れるのは何時もの前開きパーカーを脱いで黄色のベルクル付きワイシャツの上に防弾ベストを着込んだM16。その表情は真剣そのもの。
「よう、指揮官。待たせたな」
《専用装備、ではないがまあ、聖剣ぐらいならば何とかなるはずだ》
「ああ、問題ないな」
そんな風に会話しながら死銃は血溜り、『透明の聖剣』を渡されていた聖剣使いの遺体から聖剣を回収し、取り出した大型のガンケースに捩じ込んで部屋の片隅へと滑らせる。
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