十八頁
《────訳があるか》
「え……」
いくつもの銃撃が響いた。
気の抜けた様な声に遅れて鮮血が吹き出す。
足に、両足に、いくつもの痛みが走る。
千切れた訳では無い、ただ、ただ、いくつもの穴が空いただけだ。
背後からのそれに紫藤イリナは振り向いて、いくつものマゼンタ色の光を見てその意識は闇に落ちた。
────────────────────
「何処に行ったのかと思ったらそこにいたのか」
M16が初めて知ったように呟く。実際、彼らをどのように配置したのかは一切M16には伝えていなかった。
そんな彼女を見ながら俺は軽く手を振り、彼らを呼び寄せる。
まるで子犬の様にわらわらと集まる小型の非人型人形、Dinergateらが上げてくる前足に軽く手を合わせて、倒れ伏す紫藤イリナを見下ろす。
その左肩には俺の刺剣が突き刺さり、両足の脹ら脛に多くの銃傷を負い、教会の戦士としての服装である黒いボディスーツは銃弾が掠れたか、やや破れ血がプツリと滲んでいる。
《Sterben。何体か回せ、医療用キットを持たせてだ》
通信を簡潔に行って、紫藤イリナの近くに落ちていた『擬態の聖剣』を拾い上げる。
盾の様な形状から人切り包丁の様な形状へと変えて即興ながらも鞘を作りそこへ収める。
「指揮官。これ」
《ン、……ああ、透明のか……コカビエルに渡しに行くぞ》
「わかった」
M16が拾い上げたもう一本の聖剣が入ったガンケースをそのまま彼女に預けて俺はコカビエルがいるであろう拠点の最奥へ向かうためにこの部屋を後にしようとして、俺は立ち止まる。
元々のを考えれば紫藤イリナも連れていった方がいいだろう。その為にもせめて軽く止血程度はと思い俺は壁に寄りかかって雀蜂らを待つことにした。
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