第七話 7月31日
「鷹原さーん! 朝ですよー!」
今日も夏海ちゃんに起こされる。これももはや日課になってしまったような。
それにしても、夏海ちゃんも早起きだなぁ。鏡子さんも朝に強いから、岬一族の血筋なんだろうか。
ちなみにその鏡子さんは、今日も朝から寄合でいないらしい。
身支度を済ませて、今日もラジオ体操へ向かう。朝早いから蝉たちも起ききれていない感じで、心なしか蝉時雨も小さ目だった。
神社に到着すると、その境内にはいつものメンバーが揃っていた。
「鷹原さん、何きょろきょろしてるんですか?」
「いや、ウシやネコやカモメはいないのかと思って」
「……さすがに今日はいないみたいですね」
別に会えるのを期待してるわけじゃないけど、いないとなると寂しい。
「あ、おはよー、羽依里ー」
「はぁー……」
「ふぅー……」
藍も蒼も、良一も天善も、揃いも揃ってものすごく憂鬱そうな顔をしている。
「どうしたんだ? なんかあったのか」
「あったんじゃなくて、これからあるんだよ……」
良一はひときわ大きなため息をつく。
「どういうことですか?」
「今日は登校日なんだ」
のみきがやれやれ、と言った感じに他のメンバーを見ている。
「ああ、なるほどね……」
楽しい夏休みの真っ最中に突如としてやってくる登校日。これほど憂鬱なものはない。
島の外からやってきている俺や夏海ちゃんはあまり実感がないけど、良一たちにとっては鳥白島は地元だし、当然登校日がある。
「ラジオ体操が終わったら、すぐに帰って準備しなきゃいけないしね」
「蒼ちゃんは二度寝もできないですし、最悪ですよね」
「まったくよねー」
この島には小学校はあるけど、それより上の学校はない。必然的に良一たちは船に乗って本土の学校に行かねばならない。
「帰りの船の関係で、どんなに早くても戻ってくるのは15時くらいになるからな。半日以上潰れることになる」
「天善は良いじゃない。船の時間まで体育館で卓球してればいいわけだし。普段とやってること変わんないでしょ」
「俺達は港で時間潰すくらいしかできないからなー。下手に動くと金かかるし、万が一船に乗り遅れたら悪夢だぜ」
もし乗り遅れたら、次の船までは数時間待ちか。都会でバス一本乗り遅れるのとはレベルが違うよな。
「よーしお前らー! 今日も来てるなー! ラジオ体操を始めるぞー!」
その時、ラジオ体操大好きさんがやってきて、今日もラジオ体操が始まる。
「第4の体操! 三半規管の鍛錬! ぐるぐるぐる~!」
ラジオ体操大好きさんが頭を振り回す。
「ぐるぐるぐる~!」
俺たちもそれにならって頭を振り回す。
「うぇぇぇ……」
「気持ち悪い……」
登校前の子供たちが続々ダウンしている。
こんなので三半規管が鍛えられるんだろうか。
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