第九話 8月2日
……朝。
いつもより少し早い時間に目が覚めた。
まだ薄暗い天井を見つめながら、昨日の出来事を思い出していた。
天善にされるがままベビーカステラを食わされ、その後の缶ケリにボロ負けした後、急に腹が痛くなって、しろはと夏海ちゃんに支えられながら帰宅した。
「俺、情けない……」
全てを思い出したと同時に、ものすごい自責の念にかられる。
ゆっくりと体を起こし、布団から出る。
起き上がって腹をさすってみるけど、今のところ違和感はない。どうやら体調も回復したみたいだ。
「皆に迷惑かけちゃったし、せめて元気な姿を見せないと」
そう考えながら早めに身支度を整えていた、その時。
「鷹原さーん、お腹の調子はどうで……あ」
ちょうどズボンを履き替えていたタイミングで、夏海ちゃんがふすまを開けて顔を覗かせた。
「きゃあああーーー!」
思わず叫ぶ俺。
「ご、ごめんなさーい!」
すぱぁん、と綺麗な音を立てながらふすまを閉める夏海ちゃん。
「ご、ごめん。早めに目が覚めたから、着替えてたんだ」
「そ、そうだったんですね。お腹痛いの、治りましたか?」
「う、うん。もうバッチリ」
しばらく、ふすま越しに夏海ちゃんと会話していた。
「ごめんね。もういいよ」
着替えを終えて、改めて夏海ちゃんと顔を合わせる。
「夏海ちゃん、昨日は心配かけてごめんね」
俺は誠意を込めて頭を下げる。
「はい。本当に心配しました」
「これからはドカ食いは禁止ですよ」
「うん」
肝に銘じておこう……。
「あ、羽依里君。具合良くなった?」
さっきの騒ぎを聞きつけてか、鏡子さんもやってきた。
「はい。ご心配おかけしてすみません」
同じように頭を下げる。
「いいんだよ。それより、しろはちゃんも心配してたよ」
「はい。わかってます」
皆に迷惑をかけてしまったし、神社に着いたら皆に謝ろう。
「それじゃ夏海ちゃん、ラジオ体操行こうか」
「はい!」
その後は夏海ちゃんと一緒にラジオ体操へ向かう。
その道すがら、少し気になったことを聞いてみる。
「そういえば、昨日の晩ごはんはどうしたの?」
「はい。しろはさん食堂に行きました」
「一人で? 大丈夫だった?」
「はい。蒼さん達が居て、お話ししました。楽しかったですよ」
「帰りはイナリさんが送ってくれましたし」
「そっか。それならよかった」
神社の境内に到着すると、いつもの皆が居た。昨日心配をかけてしまったので、同じように頭を下げる。
「いや、無理矢理ベビーカステラを食べさせた俺も悪かった」
「天善は一度天善ゾーンに入ると、周りが見えなくなるからなー」
「まぁ、体調が良くなったのなら何よりだ」
「これからは気をつけなさいよー」
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