第15話
秋山に案内されたのは華の家であった。秋山曰く華道の名家らしい華の家は純和風のお家で雅な雰囲気を感じさせる。
・・・・そんな家の品評を述べている場合ではなかったな。
どうやら西住の話を聞いている間に秋山たちは華の母親と鉢合わせたらしい。
それだけなら良かったのだが秋山が口を滑らせ、華が親に隠れて戦車道を履修していたことがバレてしまう。さらに運の悪いことに華の母親は華が戦車道を履修することに反対だったようで、今は華と母親2人で話し合っているらしい。
「なぁ、秋山。これは流石に私たちが介入してはいけないんじゃないか?」
「ええっ!?は、華殿が心配ではないのですかっ!?」
「いや、そういうわけではない。これは華と母親の、家族の問題だ。家族の問題である以上、2人で解決するのが筋だと思うのだが?」
「で、ですが、華殿のお母様、戦車道をやっていると聞いたとき凄い形相でしたよ?」
「・・・それほどだったのか?」
「それはもう・・・一瞬白目向いて卒倒するレベルでしたね・・・。」
「・・・わかった。万が一に備えて側にはついておく・・・。」
靴を脱ぎ、手早く整え、厳かな雰囲気の廊下を進むとある部屋の襖に沙織がへばりついているのが見えた。
「沙織、来たぞ。」
「お、遅いよっ!!どこ行ってたの・・・ってあれ?みぽりんは?一緒じゃないの?」
「諸事情で先に学園艦に戻ってもらった。それで状況は?」
俺が沙織に現状の報告を求めるが、沙織は首を横に振った。
「わ、分かんないよ・・・。中の部屋がおっきすぎるし、華とお母さんの会話が奥でやってるから全然聞こえない!」
・・・参ったな・・・。中の状況は把握できないのであれば突入のタイミングも掴めないぞ・・・。
襖のそばで動向を探っていると、突如として襖が開かれた。
部屋の中から出てきたのは意を決したように表情の硬い華であった。
他に何か分かるものはないかと視線を動かすと目に涙を浮かべた付き人と思われる男性の姿が見えた。どうなったんだ・・・?
「あら・・・?麻子さん、どこにいたんですか?探したんですよ?」
「その・・・すまなかった。それで、どうだったんだ?母親への説明は・・・?」
華の様子から見るに思ったより深刻ではなさそうに見えるが・・・。納得してもらえたのであればいいのだが・・・。
「はい。金輪際、家の敷居を跨ぐなと言われました。」
・・・前言撤回。想像以上に深刻だった。秋山と沙織も言葉を失っているぞ。
俺も眉間に指を当ててしまう。
「お、おい。大丈夫なのか?それは。」
「ええ、大丈夫ですよ?」
「そ、そうか。強いんだな・・・。君は。」
華は本当に肝が据わっているな・・・・。ほぼ勘当を言い渡されたものではないのか、それは。本人が然程気にしてないからそれ以上は何も言わなかったが・・
華の実家を後にして、学園艦への帰路につく。帰りは先ほどの付き人の様な男性、確か、華が新三郎と呼んでいたか。彼が人力車で学園艦まで涙を流しながら送ってくれた。しかし時刻はすっかり暗くなり門限は確実に過ぎている。風紀委員に怒られるなこれは。
やっとの思いで学園艦の入り口につくと案の定風紀委員のそど子が待ち構えていた。そして、そのそばには西住が手を振って出迎えてくれていた。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク