第十二話 ココから始まる物語5
ガイアスが北門にたどり着いたのは、30分程の時間を有した。
北門に降り立った一同はある異変に気がつく。門番が居ないのだ。それどころか、門の前には昨日戦ったデッドフォレストボアの死体が転がっている。
その光景にスメラギは息を飲む。
「これは……」ガイアスも驚いたように言葉をもらす、そんな彼らにユメルは檄を飛ばした。
「シュペルミルの足止めだろう! どうやら、アイツは魔物を使役する力があるらしい。魔物を足止めに使い、この街の避難がままならぬままにすべて吹き飛ばすつもりだ! ガイアス、本部に急ぐぞ」
状況を再認識したガイアスは、ユメルの言葉にうなづくと、また翼を広げ本部へと急ぐ。
途中、街中で戦っている衛兵を見かける。スメラギは、助けるべきだと言葉を発するが、ユメルは無視をしろと告げた。
実際、この状況下で全員を助ける事は不可能に近い、そして、衛兵ならば尚更だ。
スメラギは歯を噛みしめると、ユメルの言葉に頷く。わかってはいる。助けたいなら、そうする事が正しいのだと。
「……スメラギ、別に見捨てるわけじゃない、後にするだけだ。衛兵を信じろ、きっと、耐えてくれる筈だ」ユメルのその言葉にスメラギは頷く
「――うん」
ガイアスはそんな二人を見ながら本部を目指す。
たどり着いた本部の庭では、銀の鎧を纏った大柄の騎士が大剣を振り回しながら魔物達と対峙している。
魔物は二つ首の犬、そして、巨大な蜥蜴等、数十匹に及んで居た。
「ガイアス!」
ユメルは目で語る、離せと。ガイアスは頷くと、庭の入り口に二人を下ろした。
その途端、ユメルは落ちている自分の道具袋まで走り出し、その道具の中から拳銃のマガジンを回収した。
そして、ガイアスが魔物に向かっていくのを横目に彼女は一回頷くと自分に言い聞かせるように呟く。
「この武器が通じるならば、私もやれる……」
膝をつき、拳銃を構える。二つ頭の犬に狙いをすませると、残りの弾全てを撃ち放つ。
首、胴、頭に全弾当てるとよろけながらも犬はこちらを振り向いた。
ふとガイアスがユメルを見るが彼女は大丈夫だと、頷くと弾倉を交換し更に射撃する。
二つの弾倉を使い切った所で漸く犬は倒れた。
それを見て意識を外したガイアスは蜥蜴の首を一刀両断の後に切り捨てていく。
「ガイアス! お前戻ったか!」銀の騎士が大剣で数匹の魔物を切り捨てながら話しかける。
「旦那さん、ユメルとスメラギ殿は無事です。ひとまずこいつらを片付けましょう」
応、と銀騎士が返すと、二人は戦鬼のように魔物を殲滅して行く。
それをユメルは眺めながら、スメラギの近くまで戻り、こちらに視線を送った魔物のみを撃ち殺していった。
庭から殲滅が終わるまで、十分もかからなかったが、ユメルの残りの弾倉は二つにまで減っていた。
銀騎士が息を落ち着けるように、大剣を地面に刺すのを見ながら、ユメルは彼に近づいていく。
「父上、ご無事で何よりです。急いでお伝えしたいことが」
「ん……なんだ?」
「空から隕石が後一時間ほどで降ってきます。東区を回りながら市民の避難をお願いしたい」
その言葉に彼は上空を見る。そして今気がついたのか、一段と大きくなる星に、驚愕の声を漏らした。
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