二章 序章
2騎の馬が草原を駆ける。
気持ちのいい晴天、肌に当たる優しい緑風。しかしながらその馬に乗っている四人は笑っていなかった。
馬が丘の上にたどり着くと、ようやく一息吐くように足を止めた。
丘から下を見れば白亜の巨大な城、そしてその周囲を囲むように城下町が広がり、その町への侵入を防ぐように巨大な石造りの外壁が東西南北に建てられている砦に繋がっている。
ランスと比較しても大きな町であり、ここ周辺では一番の軍事力を誇る巨大都市国家『城塞都市パリスタン』がそこにはあった。
「ここで一旦休憩を取るか。見晴らしがいいから魔物が来てもすぐわかる」そうアルフレムが告げると、
「もう目の前だ、このまま進んでもいいのではないか?」とユメルが不思議そうに質問した。
「もう二時間走らせてるからな、ここから見えてるっていってもあともう二時間かかる。馬がばてちまう」
そうか、とユメルは頷くと馬から降り、草むらに座り込むと肩から掛けた水筒を一口口にした。
アルフレムは足が痛いのか苦悶の表情を浮かべながら馬を降り立つと、前にのせていたスメラギを抱え、地面に卸す。
「アルフレム。足はまだ痛むのか?」心配そうにユメルが訪ねると、アルフレムは脂汗をかきながらも笑う
「少しずつは良くなってるから気にすることねえよ。それにパリスタンにたどり着けば、治療師に見てもらえばいいしな」
「治療師?」
「そういや、ランスにはいなかったんだったか。魔法使いの一種なんだが、人の体とか病気を治すために魔法を習得している人たちでな、ちょっと医者より値段は張るが四肢がなくならないかぎりは治せるとも言われてる」その話を聞いていたスメラギが不思議そうに首をかしげる。
「そういう人って伝手とかないと頼みにくい気がしますが」
その言葉に何故かアルフレムは言いずらそうに頭を掻きながら、言いづらそうにぼやく。
「知り合いが、治療師やってんだ」
「その言い方だと、ただの知り合いに聞こえないが」ユメルは興味深そうに少し笑いながら言及する。
「あー……、探究者として新人だったころからの知り合いだから、いろいろ小うるさいんだよ」
女か、そうスメラギとユメルは顔を見合わせながら同じような事を考える。
そんな女子集団がアルフレムとの関係にいらぬ想像を働かせている中、ガイアスがパリスタンの地図を広げながら、アルフレムに尋ねる。
「順序としてはだ、『その日の気分はパンシエット』に向かい、状況を報告。次に城に向かい、支援を要請……、こっちはスメラギと私がいればいいか。その間にアルフレム殿はその治療師の元で治療を受けるという形でよろしいか?」
彼は地図を木の枝で指さしながら行動を打ち合わせる。南の砦から城下町に入り、その近くにある探究者の組合(ユニオン)に向かい、そして北上し、城を指す。
それを見ながらアルフレムは頷いた。
「そうだな。ユメルの嬢ちゃんは城に行く必要はないのか?」
「私は組合(ユニオン)に依頼、説明をするために同行しているのが主だからな。現ランスの代表はスメラギだ。探究者に救援依頼を出すとして、スメラギの名前で行うと彼女の負担が大きい。それに、領民の護衛依頼を探究者に依頼するとして、スメラギが行ってしまうと、問題はないだろうがここの領主の軍が信用できないのか、等となってしまう可能性もある。だから立場的には何の関係もない私が救援要請を同時に探究者に出すのさ」
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