第五話 星降り祭
全ての作業が終えたのは少し夜が明けてからだった。寝ぼけ眼で、モヒートは瓶に黒い種を戻すと机に突っ伏して寝始めた。
それをみたユメルが静かに笑い毛布を彼女に掛けると、資料をまとめ部屋を出る。
アルフレム達は眠そうな様子も見せずにユメルを見ると、どうだった、と尋ねた。
「あの種は、おそらく植物のもので無く、動物の卵のようなものだろうと結論が出たよ」
「動物……?」
「あぁ。細胞のような組織が確認された。また、何の動物かは不明らしい、資料を漁ったがあの卵を持つ動物は確認されなかった。生きているか、死んでいるかを確かめるため、様々な溶液を与えたところ、人の血、または動物の生き血、そして魔力を与えると活動をするのが確認された。
あの溶液なんだが、魔力を遮断する作用があるらしい。液体と何を混ぜても溶けないことも確認、おそらく両方とも新発見だろうということだ」
「生きている?……俺的には殺した方がいいと思うが、危険かそうじゃないかの判断がつかない。
パリスタンの城塞都市まで持ち帰れば報酬が出るな」
それを聞いたユメルは少し興奮した様子で笑う、憧れの探求者という夢が近づいた気がしたからだ。
「その事なんだが、俺も明日に出ようと思う。一緒に来ないか?」
「ロリコンか?」少し引いた様子でユメルが身を両手で隠すと、アルフレムが驚いた様子で、
「ちげぇよ! 今回の発見は嬢ちゃんと、モヒートちゃんのものだろう! 探求者の先輩として面倒見てやるったいってんだよ!」
くつくつとユメルは笑うと、冗談だ、と告げる。
そんなユメルに呆れたようにガイアスが頭を小突く。
「面倒を見てくれるという人をからかうんじゃない」
「すまんすまん、貴殿を見るとついからかいたくなるんだ」
「なんかそれ、よく言われるけど釈然としねぇなぁ」
「たぶん、人が良すぎるのだアルフレム殿は。それと、あれはアルフレム殿の発見でもある……のだが、あの種を私が預かっても構わないだろうか?」
「うん、はじめての発見だからな、ここは先輩として嬢ちゃんに報告要領等を学ばせるべきだろ」
その言葉に子供らしい微笑みをユメルが浮かべると、アルフレムはふと、そんな顔も出来るのだなと思う。
そして、暫くは慣れるまで面倒をみるのも悪くはないか、とそう考えるのだった。
✳︎✳︎
数時間もすると完全に日が昇り、顔に当たる日差しでユメルは目を覚ます。
あの後スミノフの気遣いで、ユメルはモヒートの部屋で睡眠を取れる事になった。
うん、と背を伸ばすとその動作であの後ベッドに運ばれ寝ていたモヒートもまた目を覚ました。
一瞬、隣にユメルがいた事に驚いた表情を浮かべるが、子供の時よくあったな、とそんな過去を思い出すと、ふと微笑んだ。
「悪い、起こしてしまったな。」
「ううん、ありがとう。今日は星降り祭だもん、いつもみたいに寝てられないよ!」
モヒートもまた身を起こすとベッドから飛び降り箪笥を漁り始める。
「あ、ユメル昨日の服のままでしょ。私の貸すから着 ていきなよ」
「いいのか? 」
「いいっていいって。あとお湯沸かすから身体拭いてこ。ユメルの実家みたいにお風呂はないけどさ!」
「じゃ、今日の夜は私の家で風呂に入るか」
ありがとう、とモヒートはまた笑う。
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