ハーメルン
BUILD DIVERS ASTRAY
STAGE03 仮面と素顔と仮面

 マスダイバーなるものは前々から存在し、問題視されているらしい。
 あの事件から1週間後、再びログインしたシュウゴ改めゴーシュは、GBN内のカフェでマギーからそんな説明を受けていた。元々今回狩られた黒いグシオンの乗り手は初心者狩りで有名な悪質プレイヤーだったらしい。
 それをソードマンが始末してくれたということだ。

「ソードマンって男はアタシも知っているわ。確かにPK紛いのことまでしているって噂もあるけれど……」

「けれど……なんです?」

 マギーはあまり納得がいかないのか、下唇に指を当てて少し考え込んでから続けた。

「アタシ自身、彼とはそこそこ面識はあるのよ。彼が何もない人に襲い掛かる真似はしない。案内人のアタシが保証するわ。ちなみにそんな噂が出始めたのは最近、それもマスダイバーが問題視されて少ししてからそんな噂が出ていたのよ」

 となると逆恨みか。
 もしも本物のPKなら満身創痍のZなど恰好の獲物だったはずだ。それを露骨にスルーし厄介な赤グシオンだけを始末したとなるとマギーの言っていることは嘘ではないようだ。

「散々なデビューになったわね……」

 心底申し訳なさそうにマギーの瞳に陰が差す。しかしマギーの責任では決してない。そもそもそんなチートに手を染め挙句仕様外のチュートリアル中の妨害をかましてきた奴の責任だ。
 別にマギーが謝ることではないだろう。

「それにしても運営は何をやってるんです?」

「それはアタシにも分からないわね……一応通報自体はしているのだけれどもどう対応してるのかは発表していないし」

「…………」

 運営の対処能力に難があるのか。それともこのチート問題の根が深いのか。まぁなんであれ、マスダイバー自体倒せない相手では無いので今度は負けないようにするだけだ。

「現状自己防衛必須という訳ですか。ただアレを放置しておくのは個人的に許しがたいものもありますし、折角面白いものをやる機会を得られたんだ。このまま居なくなるのは勿体ない、ああ実に勿体ないですとも。自己防衛能力、培ってみせますよ。……でもまずは」

「まずは?」

「自分のガンプラを組まないと。前に乗ってたやつは借り物でしたから」

「アーラ。ってことはこれからガンプラデビューってとこね!」

 マギーは嬉しそうに言う。ガイドとして碌にガンプラに触れた事の無い人間が新しく門戸を叩くという行為そのものが嬉しく思えたのだろうか。これまで以上のテンションでガンプラについて話し始めるマギーにゴーシュは圧倒されながら真剣に耳を傾けた。

 ◆◆◆

「あの子、意外とダメージが小さくて安心したわ。ね? ソードマンさん?」

「止してくれ。そんなかっこいい渾名の響きだけは嫌いじゃないが基本的に何処ぞの赤い通り魔と一緒の扱いじゃねェか。マギーの姐御」

 既に盗み聞きされていることに気付いていたマギーは物陰から黒髪の紺色の作務衣姿で頭にバンダナを、そして口元には無精髭を蓄えた青年が現れる。一見くたびれた職人のように見えるそれは、癖っ毛の頭を掻きながら苦笑いでそう言った。

「……多分あのグシオン使いはまた現れる可能性があるわよ。あの子、以前から迷惑行為で何度かアカウント停止されてたらしいけどその度にアカウントを作り直しててそれも分からないように細工をしてるらしいのよ。多分アタシでも見分けられる自信は無いわ」

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