第六話 贈り物
「行っかせるかーーっ! うぉーーーーーーーーりゃーーっ!!!」
銀の、気迫のこもった叫びが轟く。
常人には閃光にしか見えないほどの速さ、身のこなしで空中を舞いながら、銀は己の数十倍の大きさを誇る化け物を両手の双斧で切りつけていく。
勢い余って樹海化している地面に背中から激突。
「どうだーーーっ!!」
バーテックスを睨み付け、咆吼を上げながら、腕を振り上げる。
すると――――――辺り一面を光の粒が舞い出す。続いて空間を埋め尽くさんばかりに花びらが舞うと、その体積を著しく減少させた敵は、フッとかき消すように消えた。
「これが……、鎮花の儀」
誰かが呟く。
こうして、三人の勇者は初陣で見事、バーテックスの撃退に成功した。
「西暦時代の勇者様も、こうやって戦ってたのかな~」
樹海化が解けると、三人は大橋を見上げる公園の祠に立っていた。
先ほどまで自分たちがしていた戦いに思いを馳せ、園子が呟く。
「どーかなー。須美はどー思う?」
「そうね……。伝説じゃ、ウィルスに侵された地から人々を四国まで避難させた後、ウィルスによって変容した化け物とも戦った、っていうけど。あれほどのものだったのかしら? そのっちの家には伝わってないの?」
「うちにも、市販されてる本なんかに書かれている以上のことは伝わってないよ~」
「そう……。他の四人の勇者様の家には伝わっているのかしら。姓が分からないから確かめようもないけど」
「それにしても戻される場所って、さっきまでいた学校じゃないんだなー。おわっ――――――上履きのまんまだー」
傷だらけの三人は、その後大赦の神官たちが迎えに来るまで、とりとめなくおしゃべりを続けた。
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