ハーメルン
氷創の英雄 ~転生したけど、特典の組み合わせで不老不死になった!~
第15話 謎の少女とオスカー・オルクス
「すみません、間違えました」
そう南雲が代表して言って全員出てからそっと扉を閉めようとする金糸雀。それを金髪紅眼の女の子が慌てたように引き止める。もっとも、その声はもう何年も出していなかったように掠れて呟きのようだったが……
ただ、必死さは伝わった。
「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」
「嫌です」
そう言って、やはり扉を閉めようとする金糸雀。鬼である。
「ど、どうして……何でもする……だから……」
女の子は必死だ。首から上しか動かないが、それでも必死に顔を上げ懇願する。
そこで、代赤が鬱陶しそうに言い返した。
「あのなぁ、こんな奈落の底の更に底で、明らかに封印されているような奴を解放するわけねぇだろ?絶対ヤベェって。見たところ封印以外何もないみたいだし……脱出には役立ちそうもねぇ。っつう訳で……」
全くもって正論だった。
だがしかし、普通、囚われた女の子の助けを求める声をここまで躊躇いなく切り捨てられる人間はそうはいないだろう。
まぁ、豪快不遜故に叛逆の騎士はズケズケと言えるのだろう。
すげなく断られた女の子だが、もう泣きそうな表情で必死に声を張り上げる。
「ちがう! ケホッ……私、悪くない! ……待って! 私……」
知らんとばかりに扉を閉めていき、もうわずかで完全に閉じるという時、南雲が歯噛みをした。もう少し早く閉めてくれていれば聞かずに済んだのにと。
「裏切られただけ!」
もう僅かしか開いていない扉。
しかし、女の子の叫びに、閉じられていく扉は止まった。ほんの僅かな光だけが細く暗い部屋に差し込む。十秒、二十秒と過ぎ、やがて扉は再び開いた。そこには、苦虫を百匹くらい噛み潰した表情をした南雲と心配顔な香織が立っていた。
因みに俺らは外に出て割とのんびりしている。まぁ、囚われている少女のことを知っているからだ。
南雲としては、何を言われようが助けるつもりなどなかった。こんな場所に封印されている以上相応の理由があるに決まっているのだ。それが危険な理由でない証拠がどこにあるというのか。邪悪な存在が騙そうとしているだけという可能性の方がむしろ高い。見捨てて然るべきだ。
(何やってんだかな、俺は)
内心溜息を吐くハジメ。
南雲に最終決定権を委ねている香織からしてみれば内心嬉しそうである。
“裏切られた”――その言葉に心揺さぶられてしまうとは。もう既に、檜山が放ったあの魔弾のことはどうでもいいはずだろうと思ってた。“生きる”という、この領域においては著しく困難な願いを叶えるには、恨みなど余計な雑念に過ぎないはずだった。
それでも、こうまで心揺さぶられたのは、やはり何処かで割り切れていない部分があったのかもしれない。そして、もしかしたら同じ境遇の女の子に、同情してしまう程度には前の南雲には良心が残っていたのかもしれない。
南雲が頭をカリカリと掻きながら、女の子に歩み寄る。もちろん油断はしない。
「裏切られたと言ったな? だがそれは、お前が封印された理由になっていない。その話が本当だとして、裏切った奴はどうしてお前をここに封印したんだ?」
南雲が戻って来たことに半ば呆然としている女の子。
ジッと、豊かだが薄汚れた金髪の間から除く紅眼で南雲を見つめる。何も答えない女の子に南雲がイラつき「おい。聞いてるのか? 話さないなら帰るぞ」と言って踵を返しそうになる。それに、ハッと我を取り戻し、女の子は慌てて封印された理由を語り始めた。
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