ハーメルン
オーバーロード ありのままのモモンガ
運営からの贈り物

 ナザリック地下大墳墓の玉座の間で、モモンガはユグドラシルが終わる時を一人で過ごしていた。最終日なのに誰かと思い出を語り合うこともできず、玉座に座りながら思い出にふけっている。
 明日は4時起きで終わったらすぐに寝なければと思っていると、プレゼントボックスに新規のアイテムが届いた。


「なになに、『嫉妬する者たちの顔面』ってなんじゃこりゃ?! 運営の嫌がらせか?! 嫉妬する者達の顔そのままって、見た目すら変わらないじゃないか! !」


 効果はソロで戦う時に全ステータスが50%アップし、敵が増えれば増えるほど強くなるという破格の性能だった。顔を隠せなくなるし、一度装備すれば外す事は出来ない呪いのような仕様のようだがそれでも強力な装備だろう。


「拾得条件は『嫉妬する者たちのマスク』を12個所持しながら一定時間パーティを組まずにプレイするか……」


 最後まで運営は頭がおかしいと思いながらも、自分には相応しいモノだと思い装備する。
 いつのまにか最後のカウントダウンが始まっており、目を閉じた。


(最後くらい、誰かと語り合いながら終わりたかったな……)











 目を閉じてしばらくすると、ログアウトされる感覚がない事に気付き目を開けた。
 そこには獣人達のいる野外のフィールドだった。


「クソ運営め、終わりぐらいしっかり出来ないのか」


 終了時のバグで、どこかのフィールドにでも飛ばされたのだろう。コンソールを操作して強制終了、GMコールを試そうとして画面表示が一切無くなっていることに気づき途方にくれる。


「完全に手詰まりじゃないか……」


 ボヤきながら辺りを見回すと、獣人系以外にもちらほらと人間の姿も見える。どうやら人間が獣人に襲われているようだ。
 ユグドラシルではPvPを推奨しており、戦闘自体に不思議なことはない。
 しかし、人間の顔が恐怖に引きつっていたのだ。


(表情があるだと? まさかこのタイミングでパッチ…… ユグドラシル2が始まったとか!! いや、それにしてはリアルすぎるが……)


 とりあえず話しかけて見るかと思ったら獣人達が襲ってきた。
 先程の戦いを見る限り弱すぎるので、プレイヤーじゃなくてNPCか雑魚敵だろうと判断したモモンガは、最後くらい人助けもいいだろうと獣人を一掃するつもりで魔法を放った。


「〈魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)負の爆裂(ネガティブ・バースト)〉」


 自身を中心に黒い波動が球状に広がり、周りの獣人を一匹残らず吹き飛ばした。


(やっぱり弱いな……っ?! まて、俺は今何をした? 自然に魔法を使えた?)


 当たり前のように魔法が使えたことに、訳がわからず焦るモモンガだったが、急に精神が落ち着き再び周りを見渡し考える。
 今まで気づかなかったが風を感じる。さらには血の匂いがする…… 電脳法で嗅覚や味覚に対する再現は禁止されている。

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