今度は森へ
顔を隠す事が出来ないモモンガは、周りにバレないように不可視化の魔法を使いながら森を目指していた。
森なら色んなモンスターとか亜人もいるだろうと、この辺りで一番近い森、通称トブの大森林を目標に動いていた。
森を探す為に使った『遠隔視の鏡』のおかげで、カッツェ平野に鏡の前で変な踊りを繰り返す骸骨の目撃情報があがったが、モモンガは知る由もない。
森に到着し、早速コミュニケーションの取れそうな相手を求めて動き出した。
しかし、モモンガが最初に遭遇したのが東の巨人と呼ばれる亜人種のトロールだった事は、運が無かったとしか言いようがない。
「ナンダ、キサマ? 東の地を統べる王であるこの『グ』の支配下で何をしている?」
部下を引き連れたトロールは自らを圧倒的強者として疑わず、弱者を馬鹿にするような不遜な態度で接してきた。
コイツとまともにコミュニケーションを取ろうという時点で選択ミスとしか言えないが、モモンガは気合いを入れていた。
(頑張れ鈴木悟!! あの地獄のリアルを生き抜いた社畜の営業技術の見せ所だ!!)
「はじめまして、私はモモンガとい――」
「アッハッハ、モモンガだと?スケルトンの名前にしては勇敢だが、このグ程ではない!! 臆病者の名前だな!!」
「……」
(なんだコイツ?! 挨拶に割り込むなんて、社会人として失格だぞ!! しかも何だよ名前で勇敢とか臆病とか?! 勇敢な名前がグってモブより酷い手抜きじゃないか?! コイツは愚なのか⁈)
ネーミングセンスについてはかつての仲間たちから酷評を受けていたモモンガだったが、本人はそこまで自分のセンスはずれていないと思っている。そんなモモンガでも手抜きと思われるような名前だった。
「……ははは、その感覚は分かりませんが、少々お尋ねしたいことがありまして。この森に言葉を話せる亜人種やモンスターは他にいないでしょうか?」
怒りたくなる物言いだが、アンデッドの種族特性の精神の沈静化が発動する程ではない。社会人として鍛えたスルースキルで適当に流す。
せめて情報収集をしようと、他の生き物はいないのかと会話の続きを試みる。
「オマエのような骨に話すことなど何もないわ!! ちょうど何か齧りたかったトコだ、アタマからバリバリ喰ってやるぞ!!」
(お前は営業に来た人間を門前払いどころか喰うのか?! 上司は何を教育してるんだ⁈ あっそうかコイツがトップだった…… なんか部下にも期待出来そうにないな、襲ってくるみたいだし、殺すか)
トロールに社会人マナーなど皆無に決まっているのだが、この世界に来てロクに会話もできず、ツッコミ不在のまま暴走気味のモモンガは気づかない。
もしここで森の賢王などに先に会うことが出来ていれば、多少なりともこの世界の常識に気づけたのかもしれない。情報さえ手に入れていればもう少しマシな考えに、早々に矯正されていただろう。
「〈集団標的・死〉」
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