『ソロジャー』使いの強者、小野寺常勝
「岡部! 邪魔をするな!」
「そうはいかないだろ! お前が勝とうとその子が勝とうとろくな結果にならない! ……ましてや、あの『DOD』のデュエルなんだぞ……!」
息も絶え絶えに岡部は訴えてくる。車を入れられるギリギリの場所からここまで全力で走ってきたのだろう。
俺も、岡部も、天野地草のデュエルを知っている。相対した者にしか分からないプレッシャーも身をもって理解している。
そして『ダメージの実体化』というのがどういうものかも、同時に体験している。故に1ポイントのダメージも受けられない……のだが俺の最後の手札は『ピッグソロジャー』ではない。
一撃ならば、或いは。しかし先程の『DOD―Star Dust』の攻撃は俺を一撃で葬る勢いだった。
「分かっている……だが!」
「なぁ、すまないがサレンダーしてくれないか? このままなら『DOD』の勝ちは揺るがないだろう―――」
岡部は俺を無視して子供に語りかける。そこへ子供を守るように黒い竜が間に入る。
岡部の言う通りだ。『ソロジャー』は手札一枚から逆転を狙えるテーマだが、それも自分フィールドのモンスターが全滅した場合の話。
ダイヤウルフは縛られ、効果破壊に耐性を持たせた『ライオソロジャー』は効果を使えない上に攻撃力は1250で、あの竜を破壊出来ない。
そしてあの竜はこちらのモンスターを無視して攻撃してくる。打破するカードは……一枚だけ入れた『ブラックホール』。ドローによるデッキ圧縮をあまりしないテーマなのが裏目に出ている。『チキンレース』を破壊しなければ……関係ない、か?
俺がデュエルの状況に思考する間も岡部は説得を続ける。
「―――だが『DOD』の勝利は、すなわち相手の死を意味する。あいつは俺の戦友なんだ。……少々失礼な奴だが俺に免じて許してくれないか?」
「おい」
お前だって子供には好かれないじゃないか!
と、突然山が、フィールド魔法『強者の頂き』が消えていく。サレンダーしたのか。……なんだと?
思わず迷彩柄のデュエルディスクを二度見する。やはりサレンダーにより俺の勝ちとなっている。
それはつまりこの子供が岡部の言うことを聞いたということで。
「……お前、『心変わり』でも使ったか?」
「何が言いたい。いや、やっぱりいい。俺としてもびっくりだしな」
ちっ、カロリーサモンのメェプル味は買っておくべきだったか!
キイィィィィ―――
黒き竜の離脱の準備がようやく完了したようだ。……『DOD』のモンスターは実体化ができる。だからデュエルが終了した後しばらくモンスターが残る事がある。幸い、デュエル外では『DOD』は破壊行動は行わない。
イィィィイアァァァッ―――!
咆哮を残し、黒き竜は何処かへと消え去った。相変わらずうるさいものだ……天野地草を見つけるにはうってつけな騒音ではあったがな。
「……しかし、まさか『DOD』の後継者が、この子とは」
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