ハーメルン
元おっさんの幼馴染育成計画
4.幼稚園はどうする?

「俊成ちゃん。来年から幼稚園に通うわよ」
「幼稚園?」

 ある日のこと、夕食を食べていると母からそんな話を振られた。
 小首をかしげた俺に母が追加で説明をする。

「幼稚園っていうのはね……そう、俊成ちゃんと同じ歳の子がいっぱいいるところなの。そこでみんなといっしょにたくさんのことを学んだり遊んだりするのよ」
「そうなんだ」

 かわいらしく頷いておく。理解を示す息子に母はご満悦だ。
 幼稚園の存在自体もちろん知っている。こちとら前世での年齢は現在の母よりも上なのだから。
 ただ上過ぎて幼稚園で何をやっていたのかまったく憶えていない。入園するのも来年ってことは四歳になってからか。いつ幼稚園に通い始めたのかさえやっぱり憶えていないんだよね。
 それが不安ってわけじゃない。学校じゃないからテストもないし、そう身構える必要もないだろう。
 気になることがあるとすれば……。

「その幼稚園には葵ちゃんもいるのかな?」

 純真な子どもを意識して尋ねてみる。母は即答せずに唸った。

「うーん、どうかしらね。また宮坂さんに聞いてみるわ」

 母は葵ちゃんのお母さんと仲良くしているようだ。子供が仲良くしているとその親同士も仲良くなりやすいのだろう。これもまた幼馴染の条件をクリアしているはずだ。
 もう幼馴染と断言してもいいだろう葵ちゃんは前世で同じ幼稚園だっただろうか? 小学校が同じというのは間違いないんだけど。幼稚園ともなると曖昧だ。
 家は子供の足で辿り着けるのだから近所と言っていいだろう。だから幼稚園の選択肢も限られる。
 一応俺からも動いてみるか。


  ※ ※ ※


 葵ちゃんと遊ぶのは日課になっていた。お互いとくに用事がなければほとんど毎日いっしょに遊んでいる。
 葵ちゃんの家に訪問する。うちと同じ一軒家だ。インターホンを押すと葵ちゃんが出迎えてくれた。

「俊成くんいらっしゃい」
「お邪魔しまーす」

 ニコニコと笑う美幼女に手を引かれ家へと上がる。中で葵ちゃんのお母さんが待っていた。

「こんにちはおばさん」

 ぺこりと頭を下げてあいさつをする。礼儀正しい俺に葵ちゃんのお母さんはうふふと嬉しそうに笑う。

「こんにちは俊成くん。葵ったら俊成くんは自分でお出迎えするって聞かないのよ」
「お母さん!」

 秘密をバラされたと言わんばかりに葵ちゃんが顔を真っ赤にさせる。それを見てさらに葵ちゃんのお母さんは手で口元を隠して笑った。それを見て葵ちゃんの怒りはさらに上がる。

「行こ、俊成くん」

 ふんっ、とかわいらしく鼻を鳴らしながら葵ちゃんが手を引っ張って先導する。後ろから「後でお菓子とジュース持って行くわね」という声が聞こえた。
 俺は葵ちゃんに引っ張られるまま二階にある彼女の部屋へと入った。
 俺はすでに宮坂葵の部屋に招待されるまでになっていた。ふふ、前世では女の子の部屋に入るなんて甘酸っぱいイベントはなかったからね。にやけそうになるのを我慢しないといけなかったよ。まだ相手は三歳児だけどね。
 葵ちゃんの部屋はピンクを基調とした女の子らしい部屋だ。けっこうぬいぐるみが多いのが特徴か。公園にもお人形さんを持って行ってたし、こういうのが趣味なのだろう。

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