ハーメルン
終にナザリックへと挑む暴君のお話
蛮王訓練

 蛮族というカテゴリーに属する種族は概して暴力的であり大部分は知性が低く、知性が高かったとしても行動は破壊的かつ欲望に忠実で理性に欠ける。人を超える知能を持つ上位種にしても、謀や統率を意識した行動を取る事もあるにせよ、大本に根差すのは力の原理である。

 調和的な行動が取れず、生産性とは無縁で、協調性皆無が基本。利己的で個人主義であり自己犠牲などクソ喰らえ。足の引っ張り合いは日常茶飯事。破壊は大得意でも創造に関しては無知。蛮族の中にも優れた芸術家や技術者自体は存在するが、それらの知識を他者と共有したりせず、教える事も無く、記す事も無い。

 故に団結し協調し創造する人族より個々の力量では遥かに上回っていながらも、今まで覇権を握る事は出来ていない。しかし、神にも近いような強大な蛮族の出現により、彼らの奉じる力の原理の下で一個に束ねられた蛮族の大軍勢は、歴史上人族を幾度となく苦しめ、時として文明崩壊の切っ掛けにさえなった。

 始まりの三剣の内、第一の剣ルミエルから力を授かった調和の神々と人族、第二の剣イグニスから力を授かった荒ぶる神々と蛮族。

 存在の根本から相容れず対立し合う人族と蛮族は、今は天上におわす神々が地上にいた時代より延々と一進一退で争い続けている──というのはソードワールド2.0の世界におけるおおまかな設定である。

 ユグドラシルとこの世界において亜人種や異形種と分類される者たちは、ソードワールド2.0の世界において蛮族と分類される者たちと似通った者も多い。リザードマン、オーガ、ゴブリン、トロール──別にユグドラシルとソードワールドに限らず、多くの作品で見る名前である。

 故にフィーネなどは完全にこれらを同一視して『我々蛮族は細かい仕事に向いてないし創造的な事は無理。人族の方がそういうのは得意だ』と決めつけて掛かっているが、この世界の亜人種や異形種は決して、彼の考える蛮族の様に創造性協調性皆無で破壊が大得意な連中とは限らない。

 頭が悪い種族や暴力性が過大な種族も存在はするが、むしろ能力や外見こそ異なるもの、人間種と同じ様に独自の文化文明を持ち、仲間内で団結しつつ敵対種族と争うという生物として当たり前の生態を持っている者も多い。
 種族によっては人間等より遥かに知能に優れ、技術を磨き、それらを伝承し記録し分け合う社会を形作っている者らも存在する。

 創造性があるし工夫もするし、戦いが全てではない。お互いを尊重し合ったり、他者から学び、新たな知識と技術を創造し、己以外の者の為に犠牲を厭わない精神性を持つ者も存在する。危機に対してわだかまりを乗り越えて団結する事だって大いにあり得る。

 ぶっちゃけフィーネより余程賢い者も多い。他者を見れば殴り掛かり、欲しい物があれば奪い取り、気に食わぬとあれば容易く怒髪天に達する馬鹿お子様の数百倍は知恵が回る人材も多くいた──特に各種族各部族の指導者的立ち位置にある者たちはそうだ。







 トブの大森林に存在する瓢箪湖とその周辺の森林では、かつてない変化が起き続けていた。その内一つを上げるのなら土地開発などは顕著な例だ。

 全ての種族を武力で無理矢理束ねたドレイクの少年──フィーネ・ロート・アルプトラオムが敷いた強制的な平和の下で、各種族は協力して外敵を駆除し、縄張りを共有し、技術を分け合い、知恵を出し合って食糧事情の改善に取り組んでいた。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析