十話 それぞれの思いとそれぞれの戦い 良馬編
ヤマトがマゼラン星雲にあるイスカンダルへの長い航海へ旅立って行った後、防衛軍の人事にちょっとした異動があった。
防衛軍日本宇宙軍連合艦隊司令長官が沖田から士官学校の校長を務めていた土方になった。
沖田は言うまでもなくヤマトの艦長へ就任した為、地球には不在なので、その後釜には彼の同期であった土方に決まるのも別に不思議ではなかった。
その理由は土方が沖田同様、経歴、能力も申し分がない人物だったからだ。
しかし、今の防衛軍が有する艦船は非常に少なく、また艦隊行動を取るような大規模な作戦もなく、土方が艦隊を率いるのはまだまだ先の事になるだろう。
そして、空席となった士官学校の校長職には宇宙戦艦 えいゆう 艦長の山南 修が校長職についた。
山南はこの戦争のご時世、人員が枯渇する中、新しい世代の人間教育をモットーに教育者としての仕事に就いていった。
ヤマトがイスカンダルへ向けての出航の際、ガミラスの大型ミサイル軌道変更作戦に従事した三笠は強烈な衝撃波を受け、再びドックへとその身を横たえ、別命あるまで待機となった。
三笠を一時降りた良馬は、作戦の指令があるまで、地上勤務となったがその辞令を受けた時、良馬は少し顔を青くした。
しかし、その様子に気が付く者は誰もいなかった。
だが、地上勤務をこなしていく内、良馬の異変に気が付いたのは良馬の下宿先の中嶋家の母、加奈江だった。
朝食の席で日に日に目の下の隈を濃くしていく良馬に違和感を覚え、ある日、加奈江は良馬に訊ねた。
「ねぇ、良馬君」
「なんでしょう?」
「良馬君、ちゃんと寝ている?」
加奈江の質問に、その場にいたみんなの視線が良馬に集中する。
みんなの視線は良馬を気遣っている。
「えっ?ええ‥でも、なんでそんな事を?」
「良馬君。この頃、目の下の隈が少しずつ濃くなってきているから‥‥」
「だ、大丈夫ですよ。俺は軍人ですよ。体調管理ぐらいちゃんと出来ますから」
「そう?それならいいんだけど‥‥」
加奈江は煮え切らない様子でこの話題を止めたが、他のみんなは未だに心配そうな目で良馬を見ていた。
その後も、良馬の目の下の隈はより一層色を濃くしていくが良馬は「大丈夫」の一点張りでみんなの心配を払いのけた。
事実、仕事に関しては何の支障もなく行っていたが一度、源三郎が強引に医者の下へ向かわせた。
医者からは「倒れないのが不思議なくらいです。睡眠薬を処方するので、それを使ってゆっくり眠ってください」と、診断された。
しかし、人間用の薬物では夜の一族である良馬にはあまり効果が無かった。
星が瞬く宇宙を三笠はガミラス軍の猛攻を受けていた。
味方の艦船は既になく、三笠ただ一隻がガミラスの弾雨の中に居た。
「味方艦、全滅!!残っているのは本艦だけです!!」
「取り舵15!!針路273!!」
「取り舵15!!針路273!!宜候!!」
永倉は良馬の指示通りのコースをとる。
しかい、ガミラスの猛攻の前には回避運動など意味をなさず、船体に次々と穴が開く。
「第23ブロック火災発生!!」
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