ハーメルン
強くてニューゲーム
5話

転移というか、2周目が始まってから数日が経過した。
アインズは自室で遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)により、周辺地理を確認していた。
前世と同じ位置にカルネ村、エ・ランテルが見つかった。街道の方向から、おそらく王都も前世と同じだろう。
時期はどうなのか、カルネ村が無事だということは、前世より前に転移してきたのか、それとも……。
そして、カルネ村で少女たちを助けたことは覚えているが、詳細はほぼ忘れた。何しろアインズにとっては30万年も前のことなのだ。
不可視化の能力を持つ僕たちをカルネ村、エ・ランテルに送り出したアインズは、彼らから齎される情報を吟味しながら今世をどう生きるか考えていた。

建国し、世界征服するにしても、前世はほぼデミウルゴスに丸投げしてしまった。
何故かデミウルゴス達からは褒め称えられることしかなかったが、今回はもう少し上手くやれる筈だ。
方針としては、出来るだけ犠牲は減らす。これはヒューマニズムではなく、単純に国の生産性を上げるためだ。
簡単に言えば、納税者を出来るだけ確保したいのだ。
今回はナザリックの運営資金もアインズの前世で蓄えた個人資産で賄える。冒険者になる必要もあるまい。
それと、国の統治にしても、自分の直轄領は出来るだけ小さくしたい、とも考えてる。
広くてもこの大陸の半分位にしたい。
世界征服したはいいが、ハンコを押しているだけで一日が終わるような生活はもうしたくない。
それでさえ、デミウルゴスとアルベドの権限を超える仕事だけを厳選した状態だったのだ。
アンデッドでなければ過労死していたに違いない。
かつての懐かしい友、社畜の代名詞と呼ばれたヘロヘロに伝えたい。

「一年で1週間も休みがあるなんて、ヘロヘロさんが羨ましいですよ。俺なんてこの前、180年連勤しましたよ。タブラさんもびっくりの大錬金術師ですよ」と。

なるべく優秀なものに自治を認め、出来る限り楽をしたい。


それとどの国を永久敵国にするか、だ。
前世では法国がそうだった。
シャルティアを洗脳した犯人が法国だと分かったため、ここだけは魔導国に組み入れることを許可しなかった。
魔導国内の反魔導王派というべき者たちを追放し、捨てる場所として30万年間、法国も続いたのだ。
この国は何故か、一年中ゴキブリが大量に発生し、備蓄している食料や畑を食い荒らすため、常に食糧不足だった。
その為、定期的に―口減らしも兼ねて―魔導国に戦争を仕掛けていた。
その際発生した死体は、魔導国でアンデッドの材料や一部の僕たちの食糧として有効活用されていた。
ほぼ完全に世界征服した後は大きな戦争など起こり得なかった為、法国は本当にありがたい国だった。法国の民にとってはたまったものではないが。
法国を支配下に置かなかったアインズの先見の明をアルベドとデミウルゴスが絶賛したのは言うまでもない。


アインズはワールドエネミーとなった際、一日に一度、周囲の死者を“強制的に”復活させる能力を得ていた。
本来は、中ボスを連続で討伐することで現れるワールドエネミーの能力だ。
戦闘中、HPがある一定値を割るごとに中ボスを全部生き返らせるという、プレイヤーのスキル回数、MPやアイテムといったリソースに加え、やる気とプレイ時間にダイレクトアタックしてくれる運営死ねという能力だったのだが、転移後の世界では仕様が変わっているらしい。

[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/5

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析