ハーメルン
やはり俺の学校生活はおくれている。
#7

何が良いかって分かるか?

殴っても殴られてもどちらも痛いんだ。
どちらも傷つくんだ。
だからこそ、ひとつひとつの戦闘において主人公と悪は互いの想いをぶつけ合い、自分の正義を示し、拳を突き合うのだ。
もちろん子供向けアニメ上、約束されし勝利の主人公の法則は破られないが、悪はきっと最後まで我が覇道に向かった事に対し悔いる事は無いだろう。
我が生涯に一片の悔い無しってな。

…あれ?悪死んでね?

結局現世では許されないのね。現代社会の闇を感じるぜ。
その覇道、ゴッホのように死後に評価されるに違いない。
それでも闇だがな…

そんな事を考えながらアニメを鑑賞していたら玄関から鍵が開く音がした。
どうやら小町が帰ってきたようだ。

少ししてから扉が開く音がし、それと同時にドタドタとカマクラが玄関に向かって駆けていく振動が床から伝わってきた。どうやらお目当ての小町ちゃんが帰ってきた事を察知したようだ。

「ただいま〜」

いつもの聞き慣れた声が聞こえてくる。

「おぅ、おかえり」

少し声を張りその声の返答を口にする。
若干大きすぎて少し恥ずかしかった。

リビングの扉が開かれて制服姿の妹が姿を現す。
若干雨に濡れた制服姿が目に映る。

「タオル。用意するか?」

「んーん、大丈夫」

「そうか」

とりあえず俺の姿を見てふぅっと嘆息して、そのまま自室へと戻っていった。
カマクラは小町の後ろをそのままついて行った。
どんだけ従順なんだよカマクラァ…

寒そうな小町の姿をみて何か温かい物でも出してやろうと考えた。
お袋が会社仲間にもらったという紅茶がある事を思い出し、戸棚を探す。

「おっ、あったあった」

戸棚にしまわれていた缶にはマルコポーロと記されていた。
缶を開けると上品でかつ芳醇な甘い香りが漂ってきた。

「お〜、これ、結構お高い奴じゃね?まぁいいか」

電子ケトルを起動させた後、ティーパックに茶葉を適量詰め込んだ。


***


丁度紅茶をマグカップに入れ終わったタイミングでリビングにカマクラを抱いた小町が姿を現す。
どうやら部屋着に着替えたようだ。

「小町、紅茶はどうだ?あったかいぞー?」

「うんっ!いる〜!」

そう言って小町が嬉しそうに返事をする。
マグカップを受け取りながら小町は別の質問も投げかけてきた。

「おにぃちゃん、お風呂入る?」

「あ〜、はいるはいる」

「うん、それじゃ誰がお風呂掃除するかゲームで決めよっか!」

うん?小町ちゃん?今日はおめぇが掃除当番でしょ?
なにゲームで掃除当番決めようなんてずる賢い真似しようとしているのかな?

「小町、お前が今日掃除当番だろーが」

「だって〜、今日カー君いつも以上に甘えてくるんだから仕方ないでしょー」

それに合わせたように小町に抱かれたカマクラが『なぁ〜』っと鳴く。

んだよそれ。俺のお家ヒエラルキーはネコ以下かよ。

「しゃーねぇな。んじゃ適当なゲーム点けるぞ」


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