ハーメルン
やはり俺の学校生活はおくれている。
#11-1

 5連休はあっという間に過ぎ、また学校へ行くという日課が俺の生活に戻ってきた。
 一色が家に来た以外は家で読書したり小町とゲームしたり買いものしたりして過ごした。
 順風満帆なGWだったと言えるだろう。

 でっ、その反動に休みぼけで気だるげに学校に来て、気だるげに授業をうけ、気だるいままに休み時間を寝て過ごした。

 するとどうだろうか、いつの間にやらお昼休みになっているではないか。

 お腹が空いているかどうかというと、食欲よりも睡眠欲が勝っている。
 なので今日はお昼寝する事にしようと決めて机に突っ伏した。

 しばらくすると肩を叩く感触がして、突っ伏した身体を起こす。
 肩を叩いた方に視線を向けると相模がどうやら俺を起こしたようだ。

「んだぁ? 相模か……何か用か?」

「ひっ、比企谷先輩、お客さんですよっ!」

 若干強ばった表情で焦った感じの相模がそのお客さんとやらへ視線を向けている。

 俺もその視線を追うように首を動かす。

 あっ、やっべっ。

 明らかに不機嫌な表情で眉間にしわを寄せ、こちらを睨んでいる雪ノ下先輩の姿が見えて、今日が何の日なのか思い出した。

 恐る恐る手を振ってみる。
 すると先ほどの不機嫌な表情はどこえやら、天使のような悪魔……いや雪女の笑顔を浮かべ、手を振り返す雪ノ下先輩。

 オマエヤクソクワスレテンンジャネェゾ

 そんな事を思ってそうだ。
 これは早く行かないと俺の命は無い。
 いや、これはどうやってもリカバリー不可の万策尽きた案件じゃねぇか。
 あんな冷たい笑顔を見せつけられたら、さすがの俺も即座に行動に移せざる得なかった。

 そそくさと立ち上がると、雪ノ下先輩しか視界に入っていなかった視野が教室全体へと広がった。

 やっぱ上級生が教室に入ってくるとこうなるか。

 それは、上級生に呼び出された奴を興味本位で観察している同級生の視線を集中的に浴びている光景だ。

 あれだ、告白した次の日にはクラスの奴らに知れ渡っている感覚と似たような感じ。

 だから、そんな視界は切り捨てて俺は雪ノ下先輩の元へ向かおうと足を進める。


「せんぱい……」


 聞き覚えのある声が聞こえて横目でその声のする方をみる。

 一色、どうした? そんな表情するのは珍しいな。
 いつもの打算的な仮面が剥がれてないか?
 なんでそんな心配する必要があるんだ?
 そんな覚悟で大丈夫か? って聞いてる?
 大丈夫だ、問題ない。
 致命傷で帰ってこれると思うぜ!

 そんな事を考えながら教室を出た。

「さて比企谷君、言い訳を聞こうかしら?」

 天使のような雪女の笑顔を崩さず雪ノ下先輩は俺に問いかける。
 その表情とは裏腹にとても冷淡な言葉が俺に耳に入る。

「この度は本当に申し訳ありません。以後この様な事が無いように善処いたしますのでどうぞ今回だけは見逃して頂けないでしょうか」

 俺は思いつく限りの謝罪の言葉を口にする。
 その様は家で携帯越しに誰かに平謝りしているうちの親父だ。
 なるほどその気持ちがよく分かった。

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