CHAPTER4
汚れた空。
その空を英雄は自らが放った分裂ミサイルと共に駆けて、地獄を運びに飛んでくる。
≪レーダーに高速で接近する飛行物体あり! 数は三つ、こちらに進路を取っています!≫
≪飛行物体の確認を急げ! 敵であるなら討つぞ!≫
≪了解!≫
≪全護衛機体及び各砲台は戦闘態勢に移行せよ! 接近する飛行物体を近付けさせるな!≫
平和とも言えるひと時に緊張感のある声が通信に飛び込んできた。
それを皮切りにカタパルト上は忙しくなり始める。
全護衛機体、各砲台はマザーウィルからのデータリンクで飛行物体の位置情報を受け取り、全ての銃口が接近してくる飛行物体の方に向く。
≪退避だ! 武器弾薬、装甲板、あらゆるものをマザーウィルに早く運ぶんだ!≫
≪高速で接近してるんだろ? 全部は運べないぞ!≫
≪運び込むものに優先順位を付けるんだよ! そうすりゃどうにかなっだろ!≫
今すぐにでも戦闘が起きる状況。各カタパルト上の補給所は怒声を飛び交わせながら戦闘に巻き込まれないようにマザーウィル内へと退避していく。
「通信がうるさくなってきた。遂に本番か」
もちろん第四カタパルトの端にいるトーマスにも怒声飛び交う通信が耳に届いており、次第に緊迫感はトーマスの身体を駆け上がっていった。
コックピットモニターにはまだ飛行物体の機影は映らない。
そして――
≪地上に展開する無人MTのカメラに飛行物体を確認! ミサイルが二つ……いやこれは、ネクストです!!≫
オペレーターの通信にマザーウィル全体に緊張が走る。
≪なんだと!? どこのネクストだ≫
≪ネクストだって!? 運べられる物だけ今すぐ運べ! 早く!!≫
オペレーターが口走った〝ネクスト〟という単語に通信は更に騒がしくなった。
それもそのはずネクストは機体性能においてノーマルや既存兵器を軽く凌駕している。まさしく圧倒的な脅威である。
「来たか!」
トーマス機のコックピットモニターにも三つの飛行物体が映る。
ミサイルが二つ。その後ろを飛ぶのは真っ白なネクストだ。
トーマスは戦闘態勢のまま高速で接近してくる真っ白なネクストを凝視する。
≪ミサイル分裂! 着弾します!≫
緊張感を孕んだオペレーターの声が告げた。
空を駆けるミサイルは分裂し、格納されていた子ミサイルが放たれる。二つ合わせて計十六発の子ミサイルが飛び、雨の如く無人MTに降り注ぐ。
ミサイルの雨は爆発を引き起こして無人MT群を巻き込んだ。大きな黒煙が立ち昇る。見るも無残に一瞬で無人MT群はスクラップと化していた。
≪分裂ミサイルにより無人MTに被害発生!≫
≪無人MTの被害報告は後で良い! 既にこちらの射程内だ、攻撃を開始しろ!≫
マザーウィルの巨大な主砲が動き出す。高速で接近するネクストに急いで狙いを付け、砲弾が放たれる。
主砲の巨大さに見合うぐらいにその威力は凄まじい。一瞬でビル諸とも他の建物を破壊し、山の形をも変えてしまうほどだ。
しかし当たらなければ威力が凄まじくても意味はない。
≪敵ネクストの被害ありません! こちらの砲撃はいずれも外れた模様!≫
≪速すぎて当たりませんよ!≫
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