ハーメルン
Muv-Luv Alternative ~take back the sky~
9話 : Turning points_
分岐の点は無音にして透明。
過ぎて振り返り、足跡を見て気づくのだ。
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人が居れば街は賑わう。例外はあろうが、存在するだけでその場所は騒がしくなるのだ。
それが良きにつけ悪しきにつけ。夢や希望、目的や理由のない人間などいない。色々な人が居て、呼吸をして。動けば、街は揺れ動く。
しかし、ここには何もなかった。
「………」
「だから言ったろうに」
助手席で無言のまま窓の外の光景を眺めている武に、運転しているターラーはため息をついた。
基地から車で2時間程度の距離を経てたどり着いたのは、かつてインド亜大陸中央に位置する街として賑わっていた都市だ。だが、今ではもう過去の栄光も消えに消えかかっている。
発端は1990年。カシュガルより侵攻してきたBETAは、ナグプールより距離にして200km離れた場所にあるボパールにハイヴを建設した。
亜大陸侵攻の中継基地として建設されたと、とある専門家は見ている。
また別の専門家は、等間隔にハイヴを建て、その地にある資源を採掘しているのだとも言う。
しかしBETAの思惑は別として、頑然たるハイヴはそこに建設されてしまった。それはBETAを生み出す施設として考えられている、"反応炉"がそこに置かれてしまったということだ。
時間が経てばBETAは増える。そして地上に溢れ、一定の数を越えればまた侵攻を始める。
間引きする余裕もなかったインドの国軍は、幾重にも及んだBETA侵攻を止めきれず、敗北。
今は国連軍の指揮下におかれるほどに弱体化してしまった。
国連軍の戦力も十分とは言えなかった。1年前のスワラージ作戦が行われる前には、BETAが一時ナグプール一帯に侵攻してきたこともあった。勿論、それを許す軍ではない。守るべき街を背中にして、誰もが決死の思いで戦った。
一歩も漏らさないと戦線を張り、維持したまま迎え撃った。
しかし、全てを漏らさず仕留めきれるほど、BETAの物量は優しいものではない。
数にして、100。小型種のみであったが、全体の何十分の1かという数が戦線の穴を抜け、ナグプールへと入り込んでしまう。そこから先は血の煉獄。異星の怪物は怖気をふるわせる外見を隠そうともせず、堂々と街を蹂躙し、そこに住む人々を蹂躙した。
基地より出撃した強化歩兵が到着したのは、街に侵入してからわずか20分後。
しかし、それでも被害は甚大なものとなった。
街のあちこちには、普通の歩兵では持つこともできないぐらいに大きい重火器の弾痕が残っている。
目に見えない傷跡も、また。
「………かつてのこの街は、多くの人々が住んでいてな。亜大陸の中央ともあって、交通や交易の要所として栄えていた。かつてここで祖先が生まれて。だから自分たちもこの街で生きて行くと、そんな人達も多かった。逃げ出すことなどできないからと、後方への避難を辞退する者が多くてな。また、多くの教徒もいた」
難しい説明を省いて言うターラーに、武は首を傾げる。
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