ハーメルン
Muv-Luv Alternative ~take back the sky~
6.5話 : In One's Mind_
吹けば飛ぶよな戦場の命。
想いが重しに重圧へ。
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訓練が再開されてから、一週間後。鬼教官の鬼な訓練でずたぼろにされた俺は、ベッドに寝転びながら、また天井を見上げていた。
「しんどい………」
教官の訓練のハードさは日に日に厳しくなっている。このままではひょっとして俺は、どこかの超人になってしまうんじゃないか。そんなことを思ってしまうほどに、きつかった。
シミュレーターの状況にしても厳しすぎる設定で失敗が多かった。怒鳴り声はしょっちゅうで、気を緩めればたちまち撃墜されてしまうぐらいの難度である。実機での訓練も始まり、これがまた辛い。突撃前衛ともなれば、Gがかかる機動は当たり前。それがまた内臓を揺らしてくるのだ。朝晩の走り込みもあるしと、ほんとにもうゲロのオンパレードな自分を思い出して、更に落ち込んでいった。
ゲロの頻度で言えば、蛙に拮抗するぐらいだろう。
ダジャレをもじり『もうお家帰る』なんて言ってもそれで許してくれるはずもなく、まだ訓練は続いていた。
でも、実戦に出る前よりは体力はついた。衛士としての強度が、朝日を見る度に高まっていると思えるのは一種の励みになっていた。嘔吐の時間も日に日に少なくなっていく。そうした成果を感じられることがあってか、自信も徐々にだけどついているように思う。
戦術機のマニュアル暗記と、自分の親父殿が教師役となった戦術機講座。
題するに、~すごいねせんじゅつほこうせんとうきくん・スーパーカーボンは素敵な素材~は別の次元でしんどいが。まあ、戦術機に関する知識が増えたのは確かなのだけど。サーシャも時折、そうだったのかといった感じに頷いているし。
(無表情でも、なあ………最近はまた違うというか)
表情をあまり変えない、という点ではずっと同じだ。しかし何というか、見れば分かるような表情をし始めていた。出逢った頃よりは、何を考えているのか分かっている気がする。
隊の二人が死んで、新たに俺たち4人が入った、先週よりはずっと人形っぽくないというか。
それで、俺はまた思い出していた。ずっと考えていたことなのだが、今日もまた、である。
一週間前に、教官とリーサ達に説明された言葉を反芻する。
「二人が、戦死した………死んだんだ、よな」
訓練を再開した夜。俺は昼に聞かされた、戦死した隊の仲間についてのことを思い出していた。
(ガルダ、は………とんがった髪型をしていた、調子のいい感じだった。出撃前には緊張していると、軽く肩を叩かれたっけ)
バン、という風に荒っぽく叩いて。そのまま、自分は着座調整をするために操縦席へと行った。
戦闘中は声を聞くだけで、顔を見る余裕もなかったから、面と向かったのはそれきりだ。
(ハヌマ、は………鼻がつぶれてた人だよな。ちょっと俺が前衛に出るとわかった後、面白くなさそうにしてた。なんでか分からないけど、俺を見て舌打ちをしてたっけ)
それも印象に残って。だから、覚えていて、でもあれっきりだ。
――――後続の戦闘に巻き込まれたせいで、戦術機ごと破壊された。骨も戻ってこないと、ターラー教官が寂しそうに言っていたっけか。
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