ハーメルン
|剣士《The Fencer》だが、それだけじゃない
すてーたすぷれーと…………

征服王イスカンダルこと雷王荒鬮の1ヶ月の猶予という生徒達のカウンセリング、この世界の常識や地理の熟知、既に戦う意思のある者に戦闘訓練や、戦う気の無い者に自己防衛術を教えたりするための期間を設けてもらうという頼みを了承してもらった。
どちらにしろイシュタルは部下達が召喚した者たちがロクに戦えないだろうと予測していたのか、ここが聖教教会本部のある山であり、麓にはハイリヒ王国という国家がある。そのハイリヒ王国に召喚された勇者達の受け入れ態勢を整えてたらしい。
そんなことをイシュタルが言いながらも今は聖教教会の正面門にクラス全員は来ていた。ここから下山しハイリヒ王国に行くらしい。
聖教教会は神山の頂上にあるらしく、凱旋門もかくやという荘厳な門を潜るとそこには雲海が広がっていた。
高山特有の息苦しさなど感じていなかったので、高山にあるとは気がつかなかった。おそらく魔術で生活環境を整えているのだろう。
クラスメイト達は、陽光を反射して煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に呆然と見蕩れておる。
儂は前世でアニメだが、日輪と黄昏(偽)の衝突時の輝きに認めておったのでそこまで見蕩れはせんかった。
因みに気絶したふりを未だに続けており、雷王の先公におんぶされている。
自慢気なイシュタルに催促され先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきた。
ここで儂は気が付きましたアピールをしつつ雷王の先公の背から降りる。
周りをよく見たら、大聖堂で見たのと同じ素材で出来ておった美しい回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。
台座には巨大な魔法陣が刻まれておった。柵の向こう側は雲海故に大多数の生徒が中央に身を寄せる。儂は堂々と柵の上に座ったがの。
クラスメイト達は中央に身を寄せようともやはり興味が湧くのは止められないようでキョロキョロと周りを見渡していると、イシュタルが何やら唱えだした。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん――〝天道〟」
その途端、足元の魔法陣が燦然と輝き出した。そして、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上へ向けて斜めに下っていく。
どうやら、先ほどの〝詠唱〟で台座に刻まれた魔法陣を起動したようだ。この台座は正しくロープウェイなのじゃろう。ある意味、初めて見る〝魔術〟に生徒達がキャッキャッと騒ぎ出す。雲海に突入する頃には大騒ぎじゃ。
「ううむ、この陣、何か物足りんのう。ヴィマーナに描かれておる陣より雑な面が大きいし。」
そう、儂は先程台座に刻まれていた魔法陣を他で見たことがあるのだ。それも、この台座のものよりさらに複雑怪奇な構造で、分かりづらいのじゃ。しかし、ヴィマーナにある陣を理解し他に構築出来れば儂の機動力が上がるので、諦める事をせんかったのじゃ。
そんなことを思いつつパトリキウスを神山より上空に待機させておく。
ミルたんが飛び出そうとしておったので適当な街……ブルックに降ろしておいた。
それが後にどうなるのかは…………分からない。だが、魔法少女(ミルたん)漢女な店主(クリスタベル)が揃うと………考えることを辞めよう。
そんなことを脳内で考えておったら雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな町、否、国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都だ。台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようだ。

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