空回りだけは絶対にしない方がいい
それから、そのままの流れでFUTURE WORLD FES.にRoseliaとしてエントリーすることが決まった。友希那さん一人ではない、Roseliaとしての目標。着地点として見たら、もうこの上ない完璧なところではないでしょうか。
無事、Roseliaの完全復活も決定し、最初はそれぞれ抱え込んでたメンバーの表情も、もう明るくなって帰路につき始める。
……ただ、一つだけ。最後に、一つだけ気になることがある。それを確かめたくて、つい声をかけてしまった。
「氷川さん、お疲れ様です……今日って、このあと時間あります?」
「時間ですか……? それなら、ありますが」
「良かった。それじゃあ……ほんの少しだけ、お話しませんか? ナンパじゃないですよ? すぐに終わることなので、帰る前に少しだけ」
時間、空いてて良かったね。ほっとしたよ。出来れば、今日のうちに禊は済ませておきたかったから。
リサさんもRoseliaの為に動いたんだもんね。だったら、俺もRoseliaのために少しくらいは頑張らないとって話。不安材料は、取れるうちに取っておくに限る。
他のメンバーにはギターの事で少し居残り練習をするとだけ伝えて、先に帰って貰った。この前はリサさんと。今回は、氷川さんと二人きりだ。
もう一回、自分の中で気合を入れて。氷川さんに話しかける。
「よかったですね、Roseliaが元に戻って……いや、前以上にバンドとして良くなれて」
「……えぇ、そうですね」
う゛っ! 氷川さんの付き物が取れたような笑みを見て決心が揺らぐ。
……俺が今やろうとしていることって、もしかしてやらなくてもいいんじゃないか。一件落着はしたんだから、もうこれでいいやん。
馬鹿野郎。最初の言葉を思い出せ。今度は俺が気合を入れて頑張るんだよ。
これは私的な問題だ。俺と氷川さんの。だから、二人の中で解決させようよ、
「……あこやリサさんが出来ないような、憎まれ役と言っては何ですけど、氷川さんや友希那さんのような人物がいるから、Roseliaは存在できてると思うんですよね」
「……何が言いたいのですか?」
なんか、何を言えばいいかわからず変なことを口走ってしまった。氷川さんの目が怖い。恥ずかしい。何を言ってるんだ俺は。変にそれっぽいことを言おうとしたのが間違いだった。
えぇい! 腹をくくれよ俺! 今の俺はなんかの漫画の主人公! 補正バリバリ! 今ならいける! ヨシ!
自分の中でスイッチを切り替えて、覚悟を決めて真正面から彼女を真っ直ぐ見つめて。
「取り返しがつかなくなる事態にならなくて、良かったですね」
「!」
わかっている。氷川さんは人がやりたがらない、憎まれてでもバンドやグループを成立させる役割にいるのは分かってる。必要な人材だ。彼女は学校でも風紀委員をやっているらしい。だからこういう立ち位置には慣れているのだろう。
「友希那さんがRoseliaを抜けるって言った時、かなり動揺していましたよね? 貴方の口ぶりは、Roseliaが解散しても何ら不思議ではないって口ぶりだったのに……」
「……何が言いたいんですか」
「僕の思い違いで無ければ、氷川さんはきっとあの時、『待って、そこまでしなくても』もしくは『そんなつもりは』……そうやって言いかけたのかなって思いまして」
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