第十五話 サイヤ人襲来
「気功砲---!!」
天津飯がありったけの力を込めた渾身の気功砲を放つ。
気の消費量が極めて大きく、身体への反動の大きさから命の危険すら伴う禁断の奥義、それが気功砲だ。
仮に生き延びる事が出来たとしても確実に寿命を縮める、本来ならば使ってはならない技であり、しかし、そのデメリットに見合った威力を備えているのも確かだった。
それを相打ち上等の覚悟と気概で、MAXパワーで解き放つ。
上がる爆煙、吹き飛ぶ戦闘服。
大地が抉れ、射線上にある全てが薙ぎ払われる。
震える腕を降ろし、霞む視界の中……天津飯は煙の向こうを凝視した。
「ふうっ……おどかしやがって」
しかし肥満のサイヤ人は生きていた。
服はボロボロになり、決して無傷ではない。
だが五体満足のまま、未だ余裕を持って大地に立っている。
天津飯はそれを見届けると、力無く地面に倒れ込んだ。
「む、無念……」
サイヤ人との力の差は彼が思った以上だった。
しかしこれは収穫だ。次に活かせる。
遠く離れた位置で既に事切れて、きっと先に戻っているだろう餃子を一瞥し、天津飯は3つの目を閉じる。
この敗北は糧とする。必ず今後に活かしてみせる。
そう決意し、そして彼もまた精神の旅をここで終えた。
「死んだか……しかし何だったんだこいつ等。おかしな技ばっか使いやがって」
天津飯達を殺した肥満のサイヤ人――パンブーキンは動かなくなった地球の戦士達を見渡す。
戦闘力が低いかと思えばいきなり上昇したり、太陽の如く眩く輝いたり、4人に増えたり、腕が増えたり、目から光線を発射したりと、とにかく意味が分からない敵だった。
それに何といっても最期の技だ。
両者の戦闘力の差を思えばダメージなど通るはずもない。
しかし通った。この身体に傷を刻まれた。
何とも不気味で、得体の知れない敵だった。
「おい、パンブーキン!」
上空から己を呼ぶ声がして、パンブーキンは顔をあげる。
そこにいたのは、肩部分のない軽装の戦闘服に、特徴的な髪型をした仲間の一人だ。
彼とは逆方面を攻めていた戦友であり、そして彼の仲間の中では最も高い戦闘力を誇る自慢の友でもあった。
「テメエ、こんな都市の制圧にいつまでかけてやがる。俺達はとっくに住民を皆殺しにしちまったぞ」
「待ってくれ、違うんだよバーダック。ちょっと面白い奴等がいてさ」
「あ? 面白い奴だ?」
バーダックと呼ばれた悟空似の男は怪訝そうにパンブーキンを見る。
それに対しパンブーキンは天津飯達の死体を指差そうとするが――いない。
先程まで確かにそこにあった死体が、跡形もなく消えている。
まるで最初からそこになかったかのように、忽然と紛失しているのだ。
「あ、あれ? いない……?」
「……お前何やってんだ?」
「ま、待ってくれ、どうなってやがる?! さっきまで確かにここにいたんだよ、バーダック!」
バーダックは一応はパンブーキンの言葉を信じたのか、スカウターで周囲を探る。
だが当然のように反応はなく、呆れたように溜息をついた。
「ああわかった、わかった。いたって事にしてやるよ。だからさっさとこの惑星を制圧して帰るぞ」
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