犬系獣人専門店 わんわんわんダーランド
扉を潜り、森を抜け街に辿り着いたモモンガ達は酒場に来ていた。
キョロキョロと物珍しそうにペロロンチーノとヘロヘロが辺りを見回している。無理もない。モモンガもまたそうだった。
酒場は様々な種族で賑わっていた。人間にエルフといったナザリックが転移した世界でも見た種族に、同種族らしきものでも姿が違うもの。またはモモンガ達が見たことも無い種族の者も当たり前のように笑い、騒いでいる。
「……す、すごいですね。これ本当に異世界だ……」
信じられないというようにヘロヘロが呟く。モモンガもその呟きに頷いた。
「……私たちが当たり前のように受け入れられていますからね……」
酒場の安っぽい木製の丸テーブルに備え付けられた椅子に腰掛けるモモンガ達は、いつもの姿のままだ。
流石に周りに害のありそうなパッシブスキルは効果を切っているが、スケルトンにバードマンに粘体が、その姿のまま椅子に腰掛けているのだ。それなのにこの世界の人間達は酒場に入ってきたモモンガ達を一瞥しただけで、気にも留めていない。
「……ユグドラシルでも、あっちでも見たことの無い種族も居る。言葉も普通に通じる。……でも文字は読めませんね」
恐らく酒場のメニューだろう。テーブルに置かれたそれを開きながらペロロンチーノが懐から眼鏡ケースを取り出し、それを掛ける。
「ああ、本当だ。マジックアイテムが使える」
驚いて声を上げるペロロンチーノに倣い、モモンガもアイテムを懐から取り出し、確かめる。読めなかったメニューが、レンズを通すとモモンガにも読める日本語に変換される。
(……ビールにワイン。エールでは無いのか。いや、花蜜エールというのもあるのか。果実酒にジュースの類。食べ物も豊富だな。……オムレツだと?これはこの世界の料理をわかりやすく変換したものなのか?それともこの世界でも当たり前のようにオムレツが存在するのか?……ふむ、これは興味深いな)
ソーセージの詰め合わせ、ナッツの詰め合わせ、焼き飯、モモンガでも理解できる料理の名前に、思わずアインズモードで感心する。
「おまたせー、素材を換金してきたよー」
思い耽るモモンガが顔を上げる。
ここに来るまでの道中に遭遇し、モモンガ達に襲い掛かってきたモンスターを返り討ちにして得た素材、牙や角、皮や肉を弐式炎雷が街のそれらしい店で換金しに行っていたのだ。
……風俗資金を得るために。
「どうでした?ちゃんと売れました?」
「ばっちり。いやー、俺のサバイバルスキルがこんな所でも役に立つとは」
弐式炎雷が持つスキルの中には初歩的な採取スキルもある。ユグドラシル時代にはそれは多少モンスターからのドロップ率が上がるなどの効果だったが、転移した世界では手際よくモンスターを素材ごとに解体するスキルに変化していた。
「肉は不味いらしくて、買い叩かれた。でも牙と皮は結構金になったよ。どうせならもっと狩っておけば良かったかな?」
ずしりと重さのある革袋を三つ、弐式炎雷はテーブルに置く。確認するようにペロロンチーノが革袋を開くとこの世界の貨幣なのだろう、それが詰まっていた。
「これで幾らなんですか?」
「七万Gだって。音改さんならもっと高く買い取ってもらえたのかもしれないね」
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