13話 みんなといると楽しい
面会謝絶だった友奈が正式に面会できるようになった。会いに行けるのは、勇者か巫女ぐらい。僕は勇者たちと一緒であってもあまり許されない。強引に押し通せるけど、後々面倒なことになりそう。町の人の目も嬉しくないものがほとんどだからね。
「それでも来ちゃうんだ?」
「まぁね! 友奈と話すのが一番好きだし」
「あはは、ありがとう。私もまーくんと話せるの好きだよ」
病院のベッドの上に座る友奈がふわりと微笑んでくれる。屈託のない柔らかな表情。好きな表情の一つだ。
怪我も治ったようで、今日にでも退院できるのだとか。普通の人よりも早く退院できるのは、きっと勇者だから。
いつ次の襲撃があるか分からない以上、できるだけブランクは無くしたほうがいい。無理のない範囲でのトレーニングから再開させて、回復を図りつつ鍛え直してほしいってことだろうね。
「本当はもっと早く来たかったんだけどね。面会ができるようになった初日とかにでも」
「でもこうして来てくれた。私はそれでも十分嬉しいよ? 本当はまーくんとはお城の外では会えないはずなわけだし」
「そう言ってもらえると僕も嬉しいけどさ〜」
「うーん、あ、若葉ちゃんに先を越されたの気にしてるのかな?」
「うっ!」
僕が笑みを引きつらせると、友奈は「やっぱり」とくすくす笑う。手で口元を隠しながら笑うその仕草に、相変わらず可愛いなぁなんて思いつつ、若葉に先を越された事実に項垂れる。
そもそも僕が友奈の面会謝絶状態が解かれたと知ったのも、若葉が教えてくれたからだ。若葉たちだってなんで僕が外に出ちゃいけないのかを知らない。それでも駄目なものは駄目だと理解する人たちだから、友奈の情報は完全に遮断されていた。
それでも僕が情報を知られたのは、若葉がポンコツをかましてくれたからだ。
若葉が杏に立ち直させてもらった後、若葉は勇者たちとの交流を増やした。タマとは骨付鳥を食べに行って、杏とは作戦会議だったかな。そしてちーちゃんとは狩猟ゲーム。その時は僕が先にちーちゃんの部屋で一緒にプレイしてたから、三人での協力プレイになった。若葉とちーちゃんが前衛。僕は後衛だね。
『佐天くんは地雷だから気をつけなさいよ』
『じ、地雷……? お前、爆発するのか……?』
『しないよ! それとちーちゃん! 僕はそんなぽんぽん死なないでしょ!』
なんてスタートだったことを思い出しては頬が緩む。ちーちゃんが軽口を言うようになった嬉しさと、ちーちゃんが若葉との仲が良くなった嬉しさを噛み締めた瞬間だからね。僕はまだ苦手意識あるけど。主に身長のせいで!
そうやって三人で協力プレイしてる時のことだった。僕が友奈の退院っていつなんだろうねって話をふと振ってみたら、
『退院は明日と聞いているぞ? ここに来る前に会った時にそう言ってたからな』
『ちょっ、乃木さん!』
『ふぁっ!? 会ったの!? 今日!? いつ面会謝絶が解除されたのさ!』
『あ、しまった……』
なんて流れになったからね! いやー、まさか僕一人だけ何も知らされない状態にされるとは思ってなかったね! これが情報規制ってやつですか!
ま、知ったからには忍び込まないと僕じゃないよねって。友奈が絡む案件だと何でもできる気がしてくるよ。無理無茶をゴリ押しになるわけだけども。
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