ハーメルン
BLACK★ROCK SHOOTER -Wishing on a STAR-
二章 ~INDUSTRIAL METROPOLIS~ 4
十三時十五分
アレスとアンドレは自分たちにあてられた部屋に荷物を置くなりさっさと街に繰り出し、雨にもかかわらず商店が並ぶ通りを十分少々歩いていた。
アンドレは傘をさし、アレスは黒い外套のフードを深く被っている。
通りは閑散としており、ほとんど人が出歩いていなかった。
「半年前ならまだ活気があったんだがな。この雨のせいか…」
「さぁな、だがなんにせよ雨は気分がいいもんじゃない。黒い雨ともなれば尚更だろう」
二人はそんなやりとりをしながら時折目に入った歩いている人達に目をやった。
皆が皆、雨合羽や傘で濡れないようにして、そのどちらもが真っ黒く汚れてしまっている。
毎日振り続けて、ついに綺麗に手入れすることさえやめてしまったのだろう。
途中店から人が出てきたが、二人の姿を見るなり逃げるように早足で去っていった。
「…ともかく食事にしよう。何か食べておきたい」
「おっそうだな。そこに飯屋があるぞ。そこで食おう」
アレスの言葉にアンドレは頷いて、目に入った店の看板を指さした。
二人は歩くペースを崩さず扉を開け、滑るように店の中に入る。
カランカランとベルが軽快な音を響かせる。
しかし、店内は異様な空気だった。
店の中はアレスとアンドレを含めて見える限りで6人。
20人は入れそうな広さの空間に3人の客がバラバラの席で話もせずにいる空間を、傘を畳みながら見たアンドレの頭の中で閑古鳥の鳴き声が聞こえてくるほどであった。
カウンターで暇そうに立ってテレビを眺めていた店員が、二人を見るなり慌ててカウンターを拭き始めた。
店内は食事の音と、厨房から響く調理音と、カウンターの棚に置かれたテレビの音だけが響いているだけであった。
「空いてる席に適当に座ってくれ。見ての通りガラガラなんだ」
カウンターの店員が二人を見て気まずそうに言った。
アンドレはアレスと目を合わせると、誰一人座っていないカウンターに並んで座る。
「この店でオススメの料理は何があるんだ?」
アンドレは帽子を取って尋ねた。
アレスもフードを取り、テレビが置かれている棚を見上げる。
どうやら古い映画が流れているようだった。
「ミートパイとポークビーンズさ。最近じゃ頼む客も減ったがね」
「じゃあポークビーンズをくれ。アレスさんだっけか?アンタはなににする?」
「…私はミートパイでいい」
「ポークビーンズとミートパイだね」
店員はそういって店の奥に行く。
入れ替わりで別の店員が厨房から出てきて、新聞を読んでいる客のテーブルに料理を出してまた厨房に戻っていく。
「…アレ、なんて映画だろうな?」
アンドレはテレビを眺めて言った。
「さぁ…、私も映画には疎いものでな」
アレスの言葉を聞いて、アンドレがアレスの方を見る。
そのままじっと見てくるアンドレにアレスは気味悪さを感じ、
「…なんだ?」と問いかける。
「…いや、アンタを昔何処かで見たような無いような気がしてな」
アンドレが答える。
「私もよく他人と間違われるよ」とアレスは言った。
「アンタみたいな顔が何人もいるのか…」
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