第10話 ブルックの町とライセン大峡谷
王宮を出発してから数日、俺達はライセン大峡谷に近い町、ブルックに辿り着いた。
ステータスプレートの提示をして町中に入り、まずはギルドに向かう。
ギルドの中は意外に清潔さが保たれた場所だった。入口正面にカウンターがあり、左手は飲食店になっているようだ。何人かの冒険者らしい者達が食事を取ったり雑談したりしている。誰ひとり酒を注文していないことからすると、元々、酒は置いていないのかもしれない。酔っ払いたいなら酒場に行けということだろう。
冒険者ギルドに入ると当たり前のように他の冒険者に見つめられる。俺達は気にすること無く、カウンターに行き、受付嬢に挨拶をする。
「いらっしゃい、今日はどのような件で来たのかしら?」
カウンターには恰幅なオバちゃんがおり、声を掛けてくれた。
「ん?この町は通りがかりでな。今日はこの町で1泊と食料の補充をと思って来たんだが………ギルド推薦の宿とかあるか?」
「あらそうかい?それならこれを参考にしな。この町について書かれてるからね。」
オバちゃんに渡されたガイドマップを見ると、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。これが無料とはちょっと信じられないくらいの出来である。
「おいおい、いいのか? こんな立派な地図を無料で。十分金が取れるレベルだと思うんだが……」
「構わないよ、あたしが趣味で書いてるだけだからね。書士の天職を持ってるから、それくらい落書きみたいなもんだよ」
オバチャンの優秀さがやばかった。この人何でこんな辺境のギルドで受付とかやってんの?とツッコミを入れたくなるレベルである。きっと壮絶なドラマがあるに違いない。
「へぇ、それじゃあまぁ、もう行くぜ。帰りがけも寄るかもしれねぇから達者でな。」
「ばいばーい!」
ギルドを出たらある宿に向かう。宿の名はマサカの宿。英霊達には人格者のポルテ嬢以外は霊体化して貰い、俺達は中に入る。
カウンターらしき場所に行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。
「いらっしゃいませー、ようこそ“マサカの宿”へ!本日はお泊りですか?それともお食事だけですか?」
「宿泊だ。このガイドブック見て来たんだが、記載されている通りでいいか?」
先程ポルテ嬢に渡しておいたオバチャン特製地図をポルテ嬢が見せると合点がいったように頷く女の子。
「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」
「1泊だけの宿泊で、3人部屋が2つと食事、風呂も付けてくれ。」
「はい。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」
女の子が時間帯表を見せる。なるべくゆっくり入りたいので、男女で分けるとして3時間は確保したい。その旨を伝えると「えっ、二時間も!?」と驚かれたが、日本の風呂というものに触れて以来英霊達では人気なのだ。だが、今日は我慢してもらうことにした。
「分かりました!では212号室と213号室の鍵おを渡しします。お帰りの際はこの籠に返却をお願い致します。」
「了解。」
212号室の鍵をポルテ嬢に預け、ポルテ嬢とアルトリア、鈴は付いていき、俺、瓸、アランは213号室に入る。
その日は何事もなく眠れて、翌日に用意された朝食を食べた後、鍵を返却して出る。
町を出る前に軽く観光して、ある服屋を見つけた。ポルテ嬢以外が魔王城に入る様な覚悟をして中に入る。
「あら~ん、いらっしゃい♥あら?久しぶりねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♥」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/9
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク