0004話
目の前にあるのは、瓦礫の山、山、山。
それは少し前まで俺がいた店の成れの果てだ。
そして俺よりも年下と思われる男の子の死体。
まだ幼いその顔は、どこか見覚えがある。
「って言うか、どう見てもリョウト・ヒカワだし」
そう、その顔は良く言えば優しげ。悪く言えば気弱そうな印象を受ける。
リョウト・ヒカワ。
原作ではバーニングPTで誘拐? スカウト? まぁ、とにかくDCに所属していたが、ハガネ部隊との戦いを経て捕虜になり、そのままハガネ部隊のパイロットになるといった流れだったと思う。
優柔不断な性格だが、バーニングPTでDCに目を付けられただけあってその操縦技術は一級品。おまけにPTやAMなんかの設計も出来て、生身でも実家が空手道場だけありそこそこ強い。でもって恋人は世界最大級の会社マオ・インダストリー常務の一人娘。
正直、ゲーム内でも屈指の勝ち組と言っても間違いないキャラクターだ。
「いや、キャラクターだった、か」
そう、現状目の前に死体がある以上、過去形で語るべきだろう。
「もっとも、リョウトにしてみれば過去形じゃなくて未来の話だったのかもしれないが」
アクセルに転生して以来、既に癖になってしまった溜息を吐く。
「全く、俺はただ平和に過ごしたかっただけなんだが」
呟きつつ、何故こんな事になったのかを思い出す。
12歳になってから既に数ヶ月。
不謹慎な話だが微妙にわくわくしつつも、その日俺は街中を歩いていた。
基本、どちらかというとインドア派である俺が外出したのは、たまには外に出て気分転換をしたいと思ったからだ。
……ちなみに、基本的にやってるのが訓練やら勉強だとしても家にいる事が多いんだからインドア派でいいんだよな?
バーニングPTだって一応ゲームなんだし。
まぁ、それはともかく。
強烈な太陽光が照りつける訳でも無く、雨が降ってたり曇っていたりする訳でも無い、まさに散歩日和といえる天気の中、特に目的も無く色々な店を適当に覗きながらぶらりとしていた。
クレープを売ってる屋台でマックスベリーなんていう、ちょっとどうよ? 的なものを食べてみたり。
(ちなみに、味は一級品だった)
何故かスイスにあるたこ焼きの屋台で一舟買ってみたり。
(大きなタコが入っていて、外はカリっとしてて中はトロっとして大満足)
いつも使っているPDAの最新機を触ってみたり。
(増えた機能が解像度がちょっと上がっただけだったので買い換えないで現状の物をそのまま使う事にした)
まぁ、そんなこんなでそろそろ夕方に近くなってきた事だし、屋台で色々と食べたから空腹度合いもそれ程じゃない為、何か軽い食べ物でも夕食に買って帰ろうとして街中から少し離れた所にあるベルナープラッテ――いわゆるポトフみたいな感じの肉がたっぷりの洋風おでんと考えて貰っていい――を売ってる店に入ったその時。
ゾワリとした不気味な悪寒で背筋が冷たくなった俺は咄嗟に叫んでいた。
「スライム!」
その叫びと共に、いつもの空間倉庫からスライムが銀色の体を見せた次の瞬間、強烈な振動のようなものを感じた。
何かの重い物体が俺にぶつかったのと、スライムが俺を守護するように薄く広がったのは、時間的に殆ど同時だったろう。
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