0004話
「なるほど、政治家ってのは良い職業だな」
「全くだ。俺も選挙に出てみるかね」
「よせよせ、ある程度の金が無けりゃ無理だっての」
……あー、なるほど。了解了解。腐った政治家の暗闘か何かに巻き込まれたって訳だな。
全く、市民を巻き込んでの暗殺騒ぎとはやってくれる。
実際に腐った政治家のとばっちりを受ければ、シャドウミラーの理想も悪くないと思ってしまう。
「まぁ、それはともかく……俺を巻き込んだ事を後悔してもらおうか」
スライムへと視線を向け、命令を下す。
「スライム、俺の周囲一帯を纏めて吸収。外にいる兵士も1人残さず吸収して良い。俺と奴らがここにいたという証拠は残すな」
命令と同時に、スライムが広がり周囲の瓦礫をみるみる吸収していく。
そう、地面に寝かせていたリョウト諸共。
「あ」
やはり命の危機という事もあり、頭に血が上っていたのだろう。リョウトの事をすっかり忘れてしまっていた。
ドクンッ
次の瞬間、何かが体の中へと流れ込んでくるのを感じる。
その衝撃に思わず地面へと倒れ込む。
幸い、コンクリートの破片やら割れたガラスなんかの危ない物はあらかたスライムが吸収してくれていたので、怪我をせずに済んだが。
自分に流れ込んでくるナニカ。それに堪えている間に外にいる兵士達の悲鳴のようなものが聞こえたが、俺はそれどころではなかった。
なんと言うか体に無理矢理エネルギーをぶち込んだような感じとでも言えばいいのだろうか。
正直あまり好きにはなれない感覚だった。
「ふぅ……」
地面に倒れ込んでから5分程経っただろうか。ようやく体が落ち着いて来たので立ち上がる。
周囲を見てみると、兵士の姿も瓦礫も消え失せていた。
もちろんリョウトの死体もどこにも見えない。
あるのは、体積を数倍に増やしたスライムのみ。
「取りあえず、消えた方が無難だな」
遠くから救急車かパトカーか知らないが、サイレンの音が聞こえてくる。
恐らく街中にいても聞こえた爆音で、誰かが公共機関に連絡したのだろう。
このままここにいてはとてつもなく面倒になると分かりきっているので、サイレンの音とは反対方向へと進み、かなり遠回りしてから家へと向かう。
「はぁ、最高の休日が最後の最後で最悪の休日になってしまったな」
居間にあるソファに倒れ込みながら愚痴る。
まさか、テロどころか軍の作戦に巻き込まれるとは思わなかった。
しかも、民間の店を爆破するなんてどう考えても普通の軍隊ではない。特殊部隊か、政治家の私兵という所だろう。
「まぁ、それはともかく。あの感覚はなんだったんだ?」
そう、今一番の疑問はそれだ。
リョウトを吸収してしまった時に感じたあの感覚。
正直、リョウトに関しては悪かったとは思うが、既に死んでいたのだししょうがないと割り切る事にする。
どの道ベーオウルフの事を考えるに、この世界はアインストに滅ぼされるんだろうし。
不思議なくらい罪悪感を感じていない事に疑問を感じないでもなかったが、そもそも俺の第一条件は俺が生き残る事だ。
「ステータスオープン」
[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:3/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク