0020話
視界に映るのは『特殊脳医学研究所』の文字。
そう。通称『特脳研』
SRX計画に必要不可欠な要素であるT-LINKシステムを作動させるキー能力『念動力』を研究する施設だ。
もちろん、研究所があるのは日本。スイスのジュネーブにいる筈の俺が何故ここにいるのかというと、話は数日前まで遡る。
「は?」
ヴィンデルの言っている意味が分からなかった。
正確に言えば、意味は分かるが理解したくないという事だろうか。
正直、ここが寮にある自分の部屋で良かったと思う。
今の俺は、とてつもなく間抜けな顔をしている事間違い無しだからだ。
通信モニタに映っているヴィンデルに向け、口を開く。
「もう1回頼む」
「ああ、何度でも言ってやる。シャドウミラーとしての初仕事だ。ちょっと1人で日本に行ってDC残党と繋がっている研究所を潰してこい。ちなみにPT等の使用は出来ない」
その言葉を聞き、思わず怒鳴り返した俺は悪くない筈だ。
「ふざけるな! シャドウミラーとしての活動はまだ先だろう。そもそも何で日本の問題に出張らなきゃいけないんだ。そして何故俺1人に限定されてる。さらに何より、PTの使用も出来ないってどういう訳だ!」
思わず突っ込みまくるが、ヴィンデルから返ってきた返事は淡々としたものだった。
まず、ヴィンデルの後ろ盾になっているお偉いさんがシャドウミラーの特殊処理班隊長に俺を抜擢したのに納得出来なかったらしい。
まぁ、当然ではある。隊員としてならともかく、特殊部隊、しかもその実行部隊の隊長に士官学校の生徒を選んだのだから。
ちなみに、ヴィンデルが中尉という身分で1つの部隊を任される事が出来たのはこのお偉いさんが関係しているらしい。原作ではATXチーム隊長のキョウスケがヴィンデルと同じ中尉だったが、あっちは隊員数4人の小隊みたいな感じでシャドウミラーとは規模が違うからな。
で、そのお偉いさんとヴィンデル曰く根気強く話し合い、取りあえず本当に隊長を務めるだけの実力があるのならという事にして貰ったが、その証明に選ばれたのが特脳研の破壊工作という訳だ。
と言うか、何で日本にある特脳研の問題がスイスにいるこっちに回ってくるのか不思議でならないんだが。そこは政治のあれこれって奴なんだろうな、多分。
ちなみにこの特脳研の所長は俺の原作知識にあるケンゾウ・コバヤシではなく全く聞いた事のない人物だった。で、その所長はDC残党やテロリストに対して情報や物資を流したりしているらしい。
これは、俺がこの世界に対して干渉した事のバタフライ効果なのか、はたまた元々こちらの世界では特脳研の所長は違う人物だったのか。
ちなみに、PTを使わないというのも俺の実力調査の一環だったりする。
「分かったな。教官には話を通してあるから明日には日本へ向かうように」
「……了解」
不承不承頷く。
確かにそのお偉いさんの心配はもっともだからだ。
俺だって、自分の肝入りで作った部隊の実行部隊の隊長が実戦経験も何もない士官学校の生徒だったらまず納得は出来ない。
と言うか、条件付きとは言えそのお偉いさんに納得させたヴィンデルの政治手腕がとんでもないな。
「分かってると思うが、お前がこの任務を失敗したら私の面目も丸潰れ。シャドウミラーも無かった事になりかねん。絶対に成功させるように」
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