ハーメルン
咲き誇る花達に幸福を
鷲尾 須美は勇者である ー 3 ー

 (初戦は、どうにかなったねぇ)

 あれから数時間後の夕方。結論から言えば、自分達はバーテックスとやらを相手に勝利した。

 途中、自分が弾いた水球が偶然にも三ノ輪さんの頭に当たって包み込まれてあわや窒息というところを彼女が水球の水を飲み干すという珍事……彼女曰く最初ソーダ、段々ウーロン茶味……こそ起きたものの、のこちゃんの考えた作戦がハマって撃退することに成功。その作戦というのが、自分が水流を耐えたことを見て思い付いたという、傘状にしたのこちゃんの槍を全員で持って水流に耐え、止まった直後に総攻撃というモノ。迎撃に飛んで来た水球は鷲尾さんが全て撃ち落とし、後は自分と三ノ輪さんが叩っ斬るだけ。拙いながら、初戦の連携にしては中々上手くいっただろう。

 総攻撃を受けたバーテックスはスゥっと消えていき、大橋の上を桜の花弁が舞う。そんな幻想的な光景は、今も脳裏に焼き付いている。“鎮花(ちんか)の儀”というらしく、大橋の上で一定以上バーテックスにダメージを与えると後は神樹様がなんやかんやしてバーテックスを消してくれるのだとか。神の名は伊達じゃないってことだろう。

 戦いが終わった後、自分達は大橋が見える展望台に居た。そこには(ほこら)があり、樹海化から戻るとその場所に出てくるようだ。勝利したことを喜ぶ少女達の笑顔は、やはりこれからも守っていきたいと自分に思わせるには充分な光景だった。遠巻きに見ていた自分ものこちゃんに抱き着かれ、三ノ輪さんとハイタッチを交わし、鷲尾さんからは“助けてくれてありがとう”とお礼を言われた。今回でだいぶ絆が深まったんじゃなかろうか。この後大赦の人が車で迎えに来てくれた。勿論行き先は学校である。自分達が戦っている間は時間が止まっているのだから、戦い終わればそれ即ち授業中なので当然のこと。三ノ輪さんはがっくりと項垂れていた。

 とは言うものの、最初に向かったのは保健室だ。のこちゃんと三ノ輪さんは水流に流されていたし、鷲尾さんも頬から血を流している。自分も真っ正直から攻撃を受けていたので両腕と踏ん張っていた足が痛いこと痛いこと……骨が折れてもヒビが入っても居なかったのは勇者服のお陰だろう。ありがとう神樹様、と拝んでおく。後はお役目の事をクラスメイトに質問されたりそれをかわしたりして過ごしつつ、そして放課後の今……ということだ。

 「アマっち~待って~」

 「うん? のこちゃん?」

 さて帰ろう、というところで後ろからのこちゃんに声をかけられる。立ち止まって振り替えってみれば、ミノさんと鷲尾さんの姿もある。

 「どうしたんだい? 3人共」

 「いやー、さっき鷲尾さんから提案があってさ」

 「提案?」

 「ええ、と……その……」

 なにやらにこにことしているのこちゃんと三ノ輪さんの間に挟まれ、恥ずかしそうにしている鷲尾さん。その口から出てきた言葉は、自分にとっても嬉しい“提案”であった。

 「今日、初めてお役目を果たせたことだし……明日の放課後、祝勝会でもどうかしらって……」

 「……まさか、鷲尾さんからそうやって誘われるなんてねぇ」


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