誘惑です
世界の全てが停止した。それ程までに、彼女が発した言葉の意味が分からなかった。
え? あの、響さん? 貴女そういうキャラじゃないような…その、え?
「もちろん、食べさせる時にあーんの言葉は必須だよ」
「……正気か?」
常軌を逸しそうなのは、俺の方かもしれない。
いや、俺とて一応はまともな…あ、ごめん。ちょっと話を盛ってしまった。
変態かもしれない。だけど、そこそこ普通の感性はもっている。
響との仲は悪くない。無論、俺が長年培った提督の仮面が、彼女との親愛を生んでいる。分かってはいるさ。完全にさらけ出せば引かれる。嫌だな。
だけど、素の自分で冗談を返せる程度には、俺も響が好きなんだ。
しっかし驚いた。顔に出してない自分が誇らしい。
「正気だとも」
響も照れていない。顔も赤くなっていないし、声だって普通だ。
よく分からない。キャラが掴めていないぞ。不思議ちゃんなのも愛らしい。
「実に日常らしい。茶目っ気のある望みだろう」
「ありすぎる」
提督の威厳的にもキツイ上に、純粋に恥ずかしい。
これは断らないといけない。かなり興味があるけども、本業を忘れてはならない。
「嫌かな」
「嫌ではないさ」
即答だった。だって寂しそうな顔したもん。無理だろう。そいつは駄目だ。反則技です。
「ふふ。だろう」
ほっとした微笑み。柔らかな表情。当然だろう? と言いたげなくせして、安堵している反応の全てが愛おしい。
一言で言おう。響さんマジ天使。
「提督の方も、何か考えておいてほしい」
「ああ」
いざ、勝負開始。となったタイミングで、響が椅子を俺の正面に移動させる。
「どうした?」
「これは真剣勝負だからね。対面するものだろう」
言われてみればそうかもしれない。
「そうか」
対面し戦う位置関係だ。
真正面から相対しているおかげで、彼女の全身がよく見える状態。
汚れ一つない黒のローファ-。スカートとニーハイがなす絶対領域。
ぴたりと閉じられたふとももの先には、俺が待ち望んだ黄金郷があるのだろう。
ゲームで見ていたより幼くなく。すらりとした姿勢から、しなやかな魅力が見られる。発達しているのだ。ふふ、ふふふ。
つまり可愛い。正面に座っているおかげで、彼女の透明な眼差しが俺に向けられている。
真っ直ぐに凜とした瞳。あまり見続けていると吸い込まれそうだ。
うひょひょ。っと、とと落ち着けい。
っ!? な、なぜに。
彼女が膝を抱えて椅子に座り直した。体育座りなわけで。閉じられた脚の先には、お宝があるわけで。
み、みえ、見え……ない! くそ!! 惑わされているぜ!! やるじゃない。
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