第七話『ヴォルデモート』
《秘密の部屋、発見される!? 発見者は、あの生き残った男の子、ハリー・ポッター!!》
日刊預言者新聞の一面にデカデカと書かれている文字を見て、ハリーはふんぞり返った。鼻の穴を大きくしながら最高の気分に浸っていた。
見出しの下には秘密の部屋の前でドラコやハーマイオニーとポーズを取るハリーの写真が掲載されている。
折角だからエグレと一緒の写真も撮らせようとしたのだけれど、カメラマンに涙目で拒否された。
『まったく! あの腰抜けめ! ジャーナリストなら記事の為に命くらい賭けたらどうなんだ! まったく!』
『ハッハッハ! 相棒ほど勇敢なヤツは人間以外の生き物の中にだって早々いねーよ!』
『フッハッハ! それなら仕方ないな! 特別に許してやるとしよう!』
『相棒、やっさしー!』
『フッハッハ!』
ゴスペルと楽しく話していると、壁から物音が聞こえた。
『エグレか?』
『そうだ、主よ。少し、お時間をよろしいか?』
『もちろんだ! お前ともじっくりと話がしたいと思っていたんだ! すごいぞ! ボクの名前が日刊預言者新聞の一面を飾ったんだ! グレンジャーが邪魔だが、写真も載ってる!』
『そうか、それは良かったな』
エグレはどうでも良さそうに言った。
『オイオイ、エグレさんよー。もうちっと感情篭めて相棒を褒めてやれよな!』
『そんな事よりも、主よ』
エグレはゴスペルを華麗に無視した。
『無視すんじゃねー!』
『黙れ、ゴスペル』
エグレは壁越しに殺気を放った。ゴスペルは『キャァ』とハリーの腕に巻き付いた。
『ゴスペルをあまり怖がらせるんじゃない! それで? とりあえず、用件を聞かせてくれ』
『大した事ではない。現在、ホグワーツ内部に先代継承者が潜伏しているだけの事だ』
『……は?』
エグレの言葉に、ハリーの思考は一瞬止まった。再起動しても、すぐには言葉の意味を呑み込む事が出来ず、呑み込んだ後にも理解に時間を要した。
エグレの言う、先代継承者とはトム・マールヴォロ・リドルの事。要するに、ヴォルデモートだ。
『やっぱり、生きていたのか』
言っておきながら、ハリーはあまり彼の死を信じていなかった。
本で調べた限りでも、ヴォルデモートという男の力の強大さは感じ取る事が出来た。そんな男が赤ん坊に反撃を受けて滅び去るなど、ありえない。
その瞬間に何かが起きたのだろう事は確実だ。そうでなければ闇の帝王とまで謳われた男が姿を隠す理由がない。
少なくとも、世間一般の風評通りでは無いだろう。赤ん坊に出来る事など泣き叫ぶ程度の事だ。おそらく、ハリー自身はあまり関係ないだろうと結論づけていた。
『いいや、生きてはいない』
『ん? どういう事だ? だって、潜伏しているんだろう? 目的はボクか? それとも、ダンブルドアか?』
『どちらも違う。今のリドルには他者を害する余力などあるまい。愚かな事だ。アレを自身に使うとは……』
ハリーはエグレの言いたい事がイマイチ理解出来なかった。
『エグレ、アレとは何の事だ? それに、生きてはいないとは? ボクでも、ダンブルドアでもない目的とは何なんだ?』
『順番に答えよう。アレとは分霊箱の事、生きてはいないとは文字通りであり、目的は賢者の石だ』
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