第八話『ニュート・スキャマンダー』
一番最初に我に返ったのはドラコ・マルフォイだった。この場において、何が起きたのかを最も理解していたのはハリー・ポッター自身を除けば彼だった。
まるで、時が停止したかのようだ。これだけの人数がひしめき合っている中で物音一つしない。すべての人間が唖然とした表情でハリーを見つめている。
あの偉大なる魔法使い、アルバス・ダンブルドアでさえ、目を見開いて硬直している。それを愉快だと笑う事は出来なかった。それほどの事をハリーはしでかしたのだ。
「ああ、やっぱりだ。僕の説が正しかったんじゃないか」
やれやれとドラコは肩を竦めた。
「ハリー・ポッター。君はヴォルデモートなんかよりよっぽどヤバイ奴だ」
「チッチッチ。間違っているぜぇ、ドラコ。ヤバイんじゃぁない。凄いんだ!」
『相棒、かっこいい!』
『……マスター、かっこいい』
ゴスペルに加え、エグレにも称賛され、ハリーの鼻はこれでもかというくらい大きく広がっていた。
それから数秒後、ようやく教師達が停止していた世界から帰還を果たした。
「は、ハリー! ハリー・ポッター! せ、せ、説明なさい!!」
マクゴナガルが叫んだ。すべての教師が《そうだ、そうだ!》と目で訴えている。
ハリーは胸を反り返らせた。
「いいだろう! 凡俗共に教えてやろうじゃぁないか! ことの始まりは十年前に遡る。ヴォルデモートは死んだ。ボクが! 殺した! けれど、ヤツは分霊箱によって魂を現世に繋ぎ止めていたんだ」
分霊箱という単語に誰もが首を傾げる中、ダンブルドアだけは納得しつつも焦りを覚えたような表情を浮かべた。
「分霊箱? それはなんですか?」
ダンブルドアが口を開きかける前にマクゴナガルが疑問を口にした。
「ロウェナ・レイブンクローの考案した卑劣な魔法だ。本来は精神を支配した相手か、あるいは敵に対して使用する呪いでね。殺人行為によって魂を分割し、器に封印する事で魂を現世に縛りつける事が出来るのさ」
ハリーはエグレから聞いた説明をそのまま口にした。ドラコにとっては二度目の説明だったけれど、やはり恐ろしい魔法だと思った。こんな魔法を開発するヤツはまともじゃないと確信した。
「不死の魔法としては不完全なものだが、ヴォルデモートは愚かにも自らの死を回避する為に分霊箱を使ったのさ。そして、復活を果たす為にダンブルドアがホグワーツに隠している賢者の石を取りに来た。そして、ボクはそのヴォルデモートに引導を渡してやったのさ!」
ハリーの演説が終わる。ダンブルドアは困ったように額に手を当てた。マクゴナガルを筆頭とした他の教師陣はあまりの事に口をポカンと開けている。生徒達に至っては未だに時が停止したままだった。
「お、お待ちなさい! 何故、あなたがそんな事を知っているのですか!? 分霊箱など、わたしですら聞いた事もありません! それに、賢者の石の事も! 何故!?」
「すべて、エグレに聞いた。ダンブルドアが校長室で喋った事も、クィレルがブツブツ後頭部のヴォルデモートと喋っていた事も、分霊箱の事も、ゴーストのなり損ないをぶっ殺す方法もな! フッハッハ! どうだ、ボクのエグレは凄いだろ! かっこいいだけじゃぁないんだぞ!」
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