ハーメルン
ゼノブレイド2×逆行(仮題)
2

 エーテル供給路。ブレイドがドライバーにエネルギーを供給するための(パス)の長さは、培った絆の深さによって伸縮する。絆を深めれば深めるほど伸びるそれを、誰が呼んだか『キズナ』とも言う。
 ホムラとヒカリと一緒に旅をして、ここに戻る寸前のキズナ距離は10メートルはあった。
 だが今はほぼ初対面で、ホムラの別人格であるヒカリとは顔合わせすらしていない。そんな状態で、何度も一緒に死線を潜り抜けてきた時ほどの絆があるものか?

 結果を見れば、それはすぐに理解できる。
 悲痛な声を上げるホムラ。
 思い通りの動きをしないレックスの身体。
 飛びかかってきたカエルは、全盛期のレックスの何十倍も遅く、今のレックスの何倍も早く、重い。

 「アンカーショット!!」

 咄嗟にホムラの側に生えていた木にワイヤーを打ち込み、距離を取る。
 今まで通りに戦ったら死ぬ。
 レックスは今の一攻防──いや、一退でそう理解した。
 ホムラからのエネルギー供給を受けながら、かつての自分を、()()()()()()()を想起する。
 あの頃は、『天の聖杯』という莫大な力を得て悦に入っていた。ある種の全能感すら持っていたし、それはインヴィディアでヴァンダムさんを死なせるに至った。ホムラをシンに奪われたこともある。あんな無様は二度と御免だ。
 内心を焦がす激情が、レックスの拳に力を込めた。

 「この状況は全く意味分かんないけど···もう、誰も死なせない!!」

 かつて恩人を死なせたとき、そう誓った。
 今は、その恩人すら助けられるかもしれなかった。
 パートナーが自分を忘れているというのは何とも悲しいが、思い出はまた作ればいい。

 そう、レックスは自分に言い聞かせた。

 「ホムラ、行くよ!」
 「はい、レックス!」

 それから、レックスは思い出すように剣を振った。
 姿勢を戻しやすい攻撃、必ず仕留める攻撃、相手を止める攻撃。
 絶対に防ぐための防御、攻撃に繋げるための防御、相手の邪魔をするための防御。
 一通りの動作を確認し終えたとき、ホムラが叫ぶ。

 「レックス、行けます!!」
 「オッケー!!」


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