ハーメルン
【完結】艦隊これくしょん ~北上さんなんて、大っ嫌いなんだから! ~
8 旗艦のおしごと
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
……そして、季節は巡り。
「阿武隈~、今日の出撃の旗艦さあ、あんたがやんなよ」
「ふぇっ!?」
北上がそう言ったのは、7月の終わりのある日のことだった。
今日の出撃は北方海域への威力偵察任務。
キス島沖で、敵の水雷戦隊による通商破壊が激しさを増してきたため、軽空母や雷巡を基幹とする艦隊で索敵、発見次第撃滅するように、という内容である。
「あたしが旗艦!? い、いけるけど……って、え、嘘っ、遠征じゃなくて出撃で!? メンバーは誰なんですか?」
「あんたとあたし、あとは
龍驤
(
りゅうじょう
)
に、
隼鷹
(
じゅんよう
)
と
飛鷹
(
ひよう
)
、それとゴーヤっち」
「きゃー!!」
とんでもない豪華メンバーだ。
「龍驤」は軽空母の中でもとびきり練度が高く、既に改二も実装されているベテラン中のベテラン。
「隼鷹」もまた、既に改二を果たしている軽空母最強勢の一角である。
隼鷹の相棒の「飛鷹」は、改二こそ実装されていないもののその練度は隼鷹に匹敵し、特に隼鷹とコンビを組んだときの戦果はめざましいものがある。
ゴーヤこと「伊58」も、潜水艦の中では伊168に並ぶ古参勢で、特に夜戦での雷撃力は潜水艦勢随一の呼び声が高い。
「なっ、何で、そのメンバーであたしが旗艦なんですか?」
実のところ、これまでにも同じメンバーでキス島沖に出撃したことは何度もある。
これまでの出撃では、毎回、旗艦は龍驤。阿武隈がそのすぐ後ろに配され、以下、北上、伊58、飛鷹、隼鷹という配置だった。旗艦の龍驤と教導の北上が阿武隈を挟み、何かあってもすぐにフォローが効く態勢をとっていた事には、随分後になってから気づいた。
結局、それらの出撃はいわば見取り稽古のようなもので、阿武隈は一発も砲弾を発射することさえなく、ただただ先輩たちが一方的に敵艦隊を叩きのめす光景を眺めていた場合がほとんどだったのだが。
「……ってゆーか、むしろあたし要らないんじゃ……」
「いや~、龍驤の奴がさ~。いつもの配置だと、なんか胸の大きさ順に並べられたみたいで納得いかないから、今度は自分をしんがりに置けってうるさくってさ~」
「……んなワケあるかい、ドアホー!!」
ばっしーん、と後ろから北上の頭をはたいたのは、軽空母・龍驤である。
「コラ北上! あんまシャレにならん冗談言うてると、しまいにゃしばくで!」
「あたた、もうしばいてるじゃん……っていうか、シャレにならないって認めちゃってる時点でもう……」
「まだゆーかー!!」
騒いでいる二人の声も耳に入らずに呆然としている阿武隈の肩をぽんと叩いたのは、軽空母・隼鷹である。
「あっはっは! いきなりの話だし、そりゃ驚くよねぇ?」
そこで急に阿武隈の耳元に顔を寄せ、小声でささやきかける。
「……でも、あんな事言ってるけどさぁ。今回あんたを旗艦に、って推したのは、北上のやつなんだよ?」
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