第十四話
空が夕暮れに染まる時間帯に、数名の一高生を乗せた車は山道を走っていた。運転を担う十文字が達也に声を掛ける。
「司波、お前の考えた作戦だ。お前が指示を出せ」
「はい」
テロ組織の拠点への侵入作戦における指示を一年生に任せるなど本来は避けるべきことだが、達也ならその程度お手の物だという判断もあるのだろう。達也も当然のように指示を出す。
「レオ、お前は退路の確保。エリカはレオのアシストと、逃げ出そうとする奴の始末」
「捕まえなくていいの〜?」
「余計なリスクを負う必要は無い。安全確実に始末しろ」
その指示はレオとエリカの戦闘能力を見込んでのことだろう。達也は淡々と指示を続ける。
「会頭は桐原先輩と芺先輩を連れて裏口に回って下さい。俺と深雪はそのまま踏み込みます」
「分かった。任せておけ」
十文字は運転しながら生い茂る木々の奥に見える廃工場を見据える。間も無く到着だった。目の前に固く閉ざされた門が迫る。
「今だ、レオ!」
「『装甲』ーーーー!」
レオの硬化魔法により達也たちを乗せた車は難なく門を文字通り突破する。
ド派手な侵入を経て、達也達は彼の指示通り動き出す。芺は散開前に“エリカ”と声をかける。
「どうかしました?」
「……怪我はしてくれるなよ」
「心配し過ぎですよ、大丈夫です」
「西城君も、エリカを頼む」
レオも“おうよ!”と返し、それに頷いた芺は裏口に向かって走っていった。
───
正面から踏み込んだ司波兄妹。達也は大きな部屋を前にして『精霊の眼』を発動する。
その部屋にはライフルで武装した大量の人間がいた。二人は臆さず進む。部屋の中ほどに至ったところで突然窓が開き、強い夕日が差し込んだ。そこには眼鏡をかけた学者風な見た目をした男性と、その背後に大量の武装した兵が待ち構えていた。
「初めまして、司波達也君。そして、そのお姫様は妹の深雪君かな?」
「お前がブランシュのリーダーか」
達也は深雪を守るように立ち、CADを構える。
「おお、これは失敬。僕がブランシュ日本支部のリーダー、司一だ」
「そうか。一応投降の勧告をしておく。全員武器を下ろして、両手を頭の後ろに組め」
「アーハッハッハッハ!魔法が絶対的な力だと思っているのなら、大きな勘違いだよ」
司一がそう言って手で合図を送る。それに応じるようにライフルを構えた男達は達也達に照準を定めた。
「司波達也君、我々の仲間になりたまえ。アンティナイトを必要としない君の『キャスト・ジャミング』は非常に興味深い技術だ」
「壬生先輩を使って俺に接触したのも、弟を使って俺を襲わせたのもそれが狙いか」
そう、第一高校の剣道部主将である司甲と目の前の司一は兄弟なのである。ブランシュは恐らくそこから第一高校への侵食を始めていたのだろう。
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