第十六話
夏本番が近づく七月中旬……芺は十文字がトップに立つ部活連本部に足を運んでいた。
現在、ここには『九校戦』に出場する選手及びエンジニア─技術スタッフが集合し、会議のようなものが行われていた。
まず九校戦についてだが、これは全国魔法科高校親善魔法競技大会の通称であり、日本国内に九つある国立魔法大学付属魔法科高校の生徒がスポーツ系魔法競技で競い合う全国大会である。
例年富士演習場南東エリアの会場で十日間開催され、観客は十日間で述べ十万人ほどである。
参加人数は各校から新人戦選手男女十名ずつ、本戦選手男女十名ずつの四十名、作戦スタッフは四名、技術スタッフ(エンジニア)は八名が参加できる。
一人の選手が参加できる競技は二種目のみで、一つの競技にエントリーできるのは各校とも最大三人まで。新人戦は一年生のみで、本戦は学年制限なしである。
そして、その九校戦の出場選手の選出は実力優先のため、少なくとも第一高校では生徒会主導の元行われている。第一高校から出場する選手は十文字の協力の元決定していたのだが、エンジニアが一人不足していた。そこで白羽の矢が立ったのが達也である。しかし一年生がエンジニア入りすること自体が前例は無く、更にそれが二科生となると反発とは行かなくてもそれを否定的に見る人間が出てくるのは必然かと思えた。そこで現在、部活練本部にて生徒会は達也のエンジニア入りを推薦するという旨を他の九校戦参加者に伝えたのだった。
「生徒会は技術スタッフとして一年E組司波達也君を推薦します」
「二科生が……!?」「でも風紀委員なんだろ?」「CADの調整なんて出来るのか」
やはり一科生からは否定的な意見が散見される。
「達也さんの実力も知らないのに……」
「うん……私も達也さんに担当してもらいたいな」
達也のことをよく知る雫とほのかは達也のエンジニア入りに肯定的だった。もっとも、ほのかの場合は別の想いがあるかもしれないが。
「納得いかない者がいるようだが……司波の技能を実際に確かめてもらうのが一番だろう」
「具体的にはどうする」
「実際にCADの調整をやらせてみればいい。なんなら俺が実験台になるが」
司波の実力を知っている十文字は躊躇いもなくそう述べる。しかし、二科生への偏見を捨てきれない他の人間は簡単には承諾しないようだった。
「危険です!下手なチューニングでもされたら、怪我だけでは済みません!」
「では、彼を推薦したのは私ですから、その役目は私がやります」
責任感からか、はたまた達也への個人的な気持ちかは定かではないが真由美も名乗り出る。しかし
「いえ、その役目、俺にやらせてください」
立ち上がりそう言った男は、誰から見ても意外な人物であっただろう。達也からしても入学当初に一悶着あった人物なのだから。しかし、だからこそ達也からすれば少々嬉しい申し出だったのかもしれない。
(桐原……いい男気じゃないか)
───
「課題は、競技用CADに桐原先輩のCADの設定をコピーして、即時使用可能な状態にする。但し、起動式そのものには手を加えない……で、問題ありませんね?」
「うん、それでお願い。……どうしたの?」
達也から課題の確認を受けた真由美は、どこか乗り気では無いように見える達也に問いかける。実際、達也自身はエンジニアチームに入りたかった訳ではなく、偏に深雪にお願いされたからなのだが。
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