ハーメルン
魔法科高校の副風紀委員長
第三話

「よし!リハーサルは完璧!後は本番だけね」

先程の新入生、司波達也に声をかけ巡回を終えた真由美と芺は会場に戻ってきていた。本来芺は会場の準備はもう終わっていたので、真由美を送り届けた後も暇つぶしに警備を続けるつもりだったのだが、なんでもリハーサルを見ていてほしいと真由美にお願いされていたのだった。見回りは生徒だけでなく職員もいるので人手は足りているといった判断から彼もそれを承諾した。

「どうだったかしら?上手く出来てたでしょ?」

真由美が自信ありげに聞いてくる。

「ええ、透き通るような声と心に深く刺さるお言葉の数々。どれをとっても完璧な挨拶でした」

芺にしては珍しい手放しの賞賛に少々驚く真由美。開いた口を手で隠す動作はまさに名家の子女らしい雰囲気だった。

「と、服部が言ってましたから間違いないでしょう」
「もう……そんなところだと思ったわ」
「おい芺!お前は何を!」

顔を真っ赤にして抗議する服部。文句を言うが芺はこういう所は可愛げがあるというか子供っぽいというか……などとぼーっと考えているのか取り合う気がない。

「はんぞーくん、ありがとね。あなたのお墨付きなら安心よ」
「はっ!はい!いえ、それほどでも」

真由美と話す時は相変わらず緊張がほぐれない服部を見て芺は

「何がそれほどでもないのか分からないぞ」
「さっきからうるさいぞお前は!仕事にもどれ!」
「俺の仕事は式が始まってからだ」

会場の準備は既に完了しており、外回りも終われば次の芺の仕事は式開始後の会場内の警備である。冷静さを欠いていたことに気付きぐっ……と怯む服部。真由美が見兼ねて間に入る。

「はいはい、芺君もあまりはんぞーくんをいじめちゃだめよ?」
「芺君は警備、はんぞーくんは進行!どっちも大事なんだからよろしくね?」
「「はい/はいっ!」」

───

入学式が始まる少し前、芺を含めた風紀委員会の面々は入学式の舞台袖で待機していた。

「芺、先程の警備にはCADを忘れていったようだが今はちゃんと持っているだろうな?」

風紀委員会を統べる渡辺摩利が問う。警備にCADを持たずに行くという本来なら咎められる行為をしていたのだ。当然の疑問だろう。尚、忘れ去られたCADは摩利が責任もって管理していた。

「はい、しっかりここに」

そう言って芺は制服を少し捲り、太腿の辺りを見せる。そこには丁度足の付け根から膝くらいの長さの刀剣型CADが携えてあった。

「いつものCADを付けてないから少し気になっていたけど、やはりそっちを持ってきてたんだね」

沢木が声をかける。そっちとはどういう意味合いかというと、芺は常日頃から学校には二つのCADを持ち込んでおり、今はその一つ『伸縮刀剣型CAD』を携帯していたからだった。ちなみにもう一方はメンテ中。
このCADは柳生と交流のあるとある家の協力の元制作されており、最大の特徴は本体が一般的な日本刀と同等のサイズに伸びることだろう。このCADには硬化魔法が刻印されており、想子(サイオン)が流れると硬化魔法が発動するという仕組みになっている。

「よし、それなら安心だ……よし皆!私達に仕事が生まれずに式が終了するのが最善だが、もし有事の際は速やかに行動に移れるよう、各自準備しておくように!」

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